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DATUMS 1991.10
平成3年版観光白書を読む

溝尾 良隆  立教大学社会学部教授



  ゴールデンウィークの頃になると、観光白書が刊行される。この時期だから前年の観光の状況と、当年度講じようとする観光政策が観光白書の内容になる。新聞紙上で大きく取り上げられるのは、国際観光の分野である。すなわち、前年の海外旅行者数と外国人旅行者数、国際旅行収支などが話題を集める。
  ニュースとしては確かに国際観光が注目されるが、観光白書で最も重要なところは、「国内観光の状況」、なかでも具体的に数字が明らかにされている次の表である。
 *国民一人当たり平均宿泊旅行回数及び宿泊数
   (観光、兼観光、業務、家事・帰省、その他に分かれている)
 *宿泊観光レクリエーションの量及び消費額
  例えば、平成2年には、延べ1億9000万人が宿泊観光旅行を実施し、延べ宿泊数3億6300万人に達している。消費総額は8兆2900億円である。ここの数字は、観光白書を担当する総理府内政審議室が独自に調査しているものである。他のデータはいずれも総理府の他部室、他省庁から入手している。
  しかしこの数値は昭和50年以前に遡っては使用しないこと、つまり52年版の観光白書、51年の数字からであれば連続して使用してよいということである。総理府では、ほぼ5年おきに大がかりな「全国旅行動態調査」を実施しており、この動態調査の間を埋める推計作業をおこなってきたが、次の動態調査のときとのズレが大きくなったために、51年から動態調査ほどではないが全国調査を毎年行い推計することにしたのである。51年、その場に居合わせた私は、夜中の21時をすぎて、「これまでの数字は掲載せずに、新たな調査で再出発をする」と英断をふるわれた参事官の姿を今でも思い出す。おかげで、あれからもう15年間の信用できる数字が続いたのである。51年版、52年版の観光白書の双方を比較すると、このことがよくわかる。
  その他に観光白書で利用価値が高いのは、全省庁で整備を進めている観光レクリエーションの地区と施設の現況である。観光分野の全貌が把握でき、観光の裾野の広さが理解できよう。
  観光白書は、ソフト白書、レジャー白書と異なり、国会に白書で提出して、承認を得てから白表紙を変えて世に出てくるという権威ある白書である。それだけに、経済白書のように主張を取り入れた白書になることを期待したい。平成3年版にリゾートに関する議論があってもよいのではないだろうか。

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