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DATUMS 1991.10
「環境監査」の導入

水口 剛  環境監査研究会幹事、会計士補



  今年4月、経団連が「地球環境検証」を発表した。これは地球環境に配慮した企業活動の指針として策定されたものであるが、この中の2・(2)に「自社の環境関連規定等の遵守状況について、少なくとも年1回以上の内部監査を行う」という項がある。じれはいわゆる環境監査を指している。環境監査という言葉はまだ聞きなれないが、すでにいくつかの企業で行われている。例えば、UNEP(国連環境計画)は89年にワークショップを開いて環境監査の紹介をし、レポートにまとめている。そこではブリティッシュ・ペトロリアムやロイヤル・ダッチ・シェルといった企業での実践例が紹介されている。
  実際には環境監査の名で呼ばれるものの内容は様々だが、例えばICC(国際商工会議所)は89年にレポートを出し、経営管理の用具として環境監査を定義した。それによると環境監査とは次のステップを踏む。まず事前準備として、監査対象となる施設、工場、現場などを選定し、監査チームを編成する。次に監査実施段階で、監査対象の環境に関する今とロールシステムを評価し、そのシステムが実際に機能しているか、その運用状況を調査する。最後に事後手続きとして、環境報告を作成し、経営者とその施設などの管理者に提出する。さらに改善行動が正しく実施され実効をあげているかフォローアップがなされる。こうして企業が思わぬ環境問題で思わぬ糾弾を受けることを予防するとともに、社会の一員として、経営を環境に配慮したものに変えていくべきだというのである。
  これらは内部監査としての環境監査を示している。つまり経営者の指示に基づいた、企業の内部で編成された監査チームによる監査である。もちろん、企業による自己チェックだけでなく、現行の会計監査のように外部の第三者による監査が必要だという声もある。しかし企業の環境問題は高度な技術知識と密接な関係あるので外部監査には困難が多い。また、機密保持という点からも内部監査が現実的である。
  このことは逆にいえば、企業に関連する環境問題については、個々の企業で働く企業人の責任が重いということである。企業活動は既に、単に利潤を追求するだけでなく、あらゆる面での社会的、環境インパクトを考慮しなければならない時代に入っている。その意味で全ての企業人が自らの企業での活動をチェックし、その足元を見つめ直すことが必要であろう。
  現在のところ環境監査の実施は、多様な化学品などを扱う製造業が中心である。しかしあらゆる企業活動は、何らかの意味で必ず環境負荷を与え、それは我々の生活にはねかえってくる。そして将来の世代を脅かすことにもなりかねない。レジャー・サービス産業を含め、全ての企業がその活動にあたって環境とのバランスを考えざるを得ないのである。 この7月には公認会計士、会計士補、大学の研究者、企業の環境問題担当者など有志によって、環境監査研究会が発足し、海外の文献購読を中心に、情報収集と情報交換を始めた。環境監査といった切り口を通して、環境にに責任を持つ企業のあり方を模索する企業人も、徐々に、だが確実に増えている。

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