[BACK]
DATUMS 1991.11
カルチャースクール最先端事情

神 ひとみ  ハニーグループ総合研究所研究員



  従来、生け花、茶道、料理などを日常生活の趣味やたしなみとして教えるカルチャースクールでは、生活のなかでそれらを生活に生かすスタイルを教えてきた。個人として日常生活が豊かであると感じることのできる生活スタイルである。カルチャースクールは人々に、仕事というオンタイムや家庭生活というオフタイムの他に、個人として楽しむ豊かな時間があることを教えてきたのである。日本が物質的、経済的にさらに豊かになったこの数年間には、新しいカルチャーとして、仕事や社会生活を楽しむことを教えるビジネススクールやフィニッシングスクールが登場した。
  西武百貨店ではカルチャースクール事業として『仕事の学校』というビジネススクールを行っている。さまざまな分野の仕事の領域をいかに掘り下げ発展させるかということをテーマにしたカリキュラムが多く、知識や伝統を教えるというよりは、仕事とするためのポリシーやノウハウのセミナーと、ディスカッションやワークショップが中心である。クラスは、公私を交えてクラブネットワーク化することも多く、それを仕事の現場で機能させている受講者も多い。背景にはそういったスタイルを楽しむ意識を共有することを前提とする、受講者のクラブ意識がある。同じ様な構造は、女性を対象としたフィニッシングスクール『ジョン・ロバート・パワーズ』にもありそうだ。会話、しぐさ、マナーなどをマスターするコースとして、ホテル・ニューオータニに宿泊しホテル内にある一流フレンチレストラン「トゥール・ダルジャン」での食事がプログラムされた3日間コースなどもあり、エスタブリッシュな生活スタイルの楽しみを提供する趣向が伺える。
  このような新しい形態のカルチャースクールの受講料は、おしなべて高額である。都心部の立地条件の良い場所にある教室の賃料や、ネームバリューのある講師を起用するためでもあるが、ビジネススクールの形態であることから、受講生は企業の福利厚生費を利用することも多いようだ。カルチャーを仕事や社会生活に持つ、魅力ある社会人を頭脳労働者として得たい企業のバックアップで、これらの需要は支えられていくと見られる。
  まったく新しい概念のカルチャースクールも存在する。あるカルチャーのテーマをニーズとする生活者と共にカルチャーを学び育てるコミュニケーションから、そのカルチャーをコンセプトとする商品を企画、販売していこうとする戦略を持つ店舗の存在である。そのような戦略から生まれた店舗は、カルチャーを持つ生活観や生活スタイルとして、文化を得ることこそ消費であることを生活者に教えてくれる。
  カルチャースクール機能を企画、販売、情報機能として持ち、新しい独自の消費市場を形成する企業から、生活者はカルチャーを得る生活スタイルを学んでいるといえる。

[BACK]