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DATUMS 1991.11
1億総カラオケ時代

田中 靖  レジャー・サービス産業労働情報開発センター事務局次長



  業界用語である「カラオケ」を一般用語として使用した元祖は、1976年にクラリオンが開発した業務用カラオケである。そして今、「カラオケ」は東南アジアをはじめとして世界中で通用する用語となった。
  カラオケ機器の市場規模は、現在約500億円といわれるが、一方ソフト市場は約2,500億円(1990年推計)である、そして、その市場はホーム用と業務用に大別される。ホーム用は、日本の家屋事情や業務用VD・CDの出現による、低廉なテープ式カラオケの人気の急落などによって伸び悩みの状況にあるものの、今後の動向としては、LDカラオケのブームの更なる進展や「AVシステムの一機能としてのカラオケ」の市場への定着が予想されている。
  一方の業務用カラオケは、1982年-4年頃のVD・CDカラオケの大躍進とともにカラオケブームを安定化させる原動力となった。そのなかでも特に、数年前に岡山の畑の真ん中に出現し、またたく間に全国に広まった「カラオケボックス」は、約70%が40-70歳の中高年男子であった愛好者層を、10代の少年層にまで拡大するなど空前のカラオケブームを呼び起こした。現在、全国で5万室を超えると推測されるこのカラオケボックスは、地方の独立ボックス営業と都市部のキャビン式またはカラオケビルに二分され、「子どもの非行の温床」という批判はあるものの、今後も爆発的な発展を続けるものと見られている。また、このブームを支えているのは青少年、主婦、OLであると言われているが、既にカラオケビル全体を高級ホテルイメージに装うなど、彼らの感性を捉えて離さないための努力が払われている。
  このように、女性や若者たちの進出によって、これまで大きな顔をしてマイクを握っていたオジサンたちはカラオケの世界から閉め出されようとしているのだろうか。答えは「否」である。クラリオンがまとめた「カラオケ白書」によれば、ホームカラオケの購入目的として、10代・20代は第1位に「ストレスの解消」、第2位に「練習用」を挙げているのに対し、30代以上は第1位に「練習用」を挙げている。また、一部上場企業の部・課長たちの約7割が「演歌・懐メロ」を特異としている反面、4分の1が「ポップス」を特異としているということである。ここには、新人類と言われて久しい若い部下たちとのコミュニケーションを図ろうとする、オジサンたちのいじらしい姿が見えるようである。

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