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DATUMS 1991.12
ホテル産業1991年の総括

稲垣 勉  立教大学助教授



  ホテル産業にとっての1991年を一言でまとめるならば、バブル崩壊後のボディブローが徐々にきき始めた年ということができよう。地価の高騰や建設コスト上昇による新規進出の抑制など、ホテル産業にとってバブル経済は必ずしもプラスに作用した訳ではない。しかし膨大な固定資産を抱えるというホテル産業の特徴からしても、バブルは含み資産の増加という大きなメリットをもたらし、ことにバブルで膨れ上がった利用者の消費能力が、ホテル産業にとって大きな追い風になったことは否定できない。高級ホテルを含めて80-90%という稼働率はほんの数年前までは考えられなかった水準であり、こうしたタイトな需要を背景に値上げによる収入確保が日常化してきた。こうした事情は宴会、飲食等でもまったく同様である。
  バブル経済で一旦ランクアップした消費傾向は一朝一夕で元に戻るものではない。バブル崩壊後、徐々に減速しながらもホテル市場は劇的な市場崩壊をみせるには至っていない。しかし湾岸戦争の影響もあって稼働率は軒並み低下し、収益の柱といわれた宴会にもかげりが見え始めた。ここ2-3年でホテルの可各区水準は上がるところまで上がりきってしまっており、今後ホテル産業がバブルのつけを払わざるを得ない局面を迎えることは必至である。ことに悪のりして海外ホテルへの無計画な投資を行った企業には経営破綻など、既にバブル経済のつけが回っている。
  一方、ビジネスホテルをはじめ、リーズナブルな価格帯のホテルでは、バブル経済によって思ったほど新規参入が増加しなかったことに加え、趨勢としては日常的ホテル宿泊需要は拡大を続けていることで供給不足が慢性化し始めた。都市圏における客室不足などホテル需給のアンバランスがより一層明確化したのも今年の特徴であろう。出張客を主体として、妥当な価格水準でのホテル供給へのニーズは大きな高まりとなりつつある。
  また、これまでホテル産業をリードし続けてきた多機能大型ホテルにかわって、医療等に機能特化した中小規模ホテルが登場し始めたことも、ホテル産業の今後を考える上で重要な今年の傾向といえよう。

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