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DATUMS 1991.06
エコ・ツーリズムの可能性

菅原 敏夫  東京自治研究センター

■すがわら としお


  環境問題に関する国際会議が目白押しである。日本では7月にエコ・アジア91(東京)が予定されており、来年6月の国連環境開発会議、環境サミット(ブラジル)まで世界中で関心が高まっていくだろう。
  アメリカでは今年、大規模な「アメリカ環境博覧会(ECO EXPO)」が開催されている。4月のロサンゼルスを皮切りに、6月にはデンバー、9月ニューヨーク、12月アトランタと続く。日本からの参加者も多いようだ。
  関心の高まりはビジネスにも影響を与えている。エコ・ビジネスの隆盛である。旅行業界も例外ではない。「エコ・ツーリズム(ここでは環境をテーマにした企画旅行というほどの意味)」が盛んになろうとしている。アメリカ環境博へのツアーはすでに大手代理店から売り出されている。
  意味のある企画だと思うが、これはエコ・ツーリズムの半面でしかない。目的や目的地がエコロジーというのはエコ・ツーリズムの一つの側面だ。いわば、旅行型のエコ・ツーリズムである。
  もう一つ大事なのは、旅行型のエコ・ツーリズムに対比していうなら、滞在型のエコ・ツーリズム。無目的・体験型のエコ・ツーリズムといってもいいだろう。自分が自然の一部であることを体感する時間。自然と自分たち人工的な人生(ちょっとおかしな表現だろうか)の距離を測るいとま。そうしたものを、それこそ自然に、コーディネイトできるのならば、エコロジーの名に恥じないものとなるだろう。
  旅行業にも注文するグリーン・コンシューマー(環境を大切にする消費者)が登場している。体験型のエコ・ツーリズムを求める若い人も多いと聞く。ここで忘れてはならないのは修学旅行の体験だ。画一、大量消費の典型のように言われている修学旅行だが、ここのところ農村村体験旅行が静かなブームだ。その体験者がリピーターとしてエコ・ツーリズムを求めるというのだ。
  両方の意味でのエコ・ツーリズムが成立するために、我々の社会が解決すべき課題は多い。労働時間の短縮やバカンスの実現、安く利用できる滞在施設はいうまでもなく、余暇文化の創造など。何よりも私たちの身の回りに体験すべき自然が残っているのかというのは深刻な疑問だ。

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