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DATUMS 1991.08
スロー・ツーリズムの体験:スウェーデン・ダーラナ地方

佐藤 正廣  日本交通公社労働組合副委員長

■さとう まさひろ


  観光労連海外交流団の一員として朱塗の彩色を施した木工の民芸品、ダーラナ馬で知られるスウェーデン・ダーラナ地方を訪れた。日本的リゾートの可能性を考えるためにヨーロッパのリゾートの成功事例から学ぼうというわけだ。佐藤誠著『リゾート列島』(岩波新書)のなかで、ダーラナは「木が育つぐらいのスピードで熟成させる観光・リゾート開発と、ゆったりくつろいで過ごす旅を体験できる、本物のリゾート」と高く評価されている。
  私たち一行が宿泊するテリベリまでストックホルムからバスで約3時間30分。なだらかな丘陵が続き、森に囲まれた湖を幾つもぬけ、ようやくシリアン湖畔に立つホテル・クロッカー・ゴーデンに着いた。驚いたことに夜10時過ぎなのに陽は一向に沈む気配なし。白夜のリゾート体験をすることになった。
  ホテル名のクロッカー・ゴーデンはスウェーデン語でクロッカスの庭を意味する。1940年代に納屋、馬小屋や村の小学校等、民族色の濃い古いログハウスを改築したもので、どことなく日本のペンション風。敷地には4、5室程度の客室棟(全部で40室)の他、レストランや生活芸術品(ヘムスロイド)を販売する店舗等が散財する。6月22日の夏至祭には民族衣装をまとった村人でホテルの庭は賑わうらしい。
  室内が外観と違って近代的。年代物の調度品がこの地の生活文化を語りかける。ただし私たちが泊まった部屋はベッド、カーテンが可愛らしく、日本的感覚だと新婚向き。中年の男性2人が泊まるのには躊躇ムード。
  眼下に広がるシリアン湖を眺めながら読書にふけり、時の流れを感じる心境になればと格好だけはしてみたものの、これがスロー・ツーリズムだとしたら果たして何人の日本人が受け入れられるのか?日本人の余暇が成熟していないのか、都市型消費にならされた私たちに最初から何もしないリゾートは不可能なのか、答えはいずれかだ。
  長野出身のメンバーが漏らした「俺の田舎と同じじゃないか…」という言葉が印象的だった。「どうしてこれがリゾートなの」というわけだ。田園回帰はヨーロッパ特有の志向なのかも。

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