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DATUMS 1991.09
日本人観光客とアメリカのホテル労働者

石 朋次  日本太平洋資料ネットワーク(JPRN)事務局長

■いし ともじ


  日本人の観光客が大勢、今、サンフランシスコの街で、ピケを張る労働組合の間を通って、宿泊予定のホテルに入って行く。こままでは組合員や支持者の中から日本人批判が出てくるであろう。サンフランシスコの一流ホテル、パーク55での話である。
  ホテル・レストラン従業員組合は、組合結成支持の過半数以上の従業員の署名を獲得し、ホテル側に団体交渉の代表として承認を求めた。ホテル側は組合承認を拒否、強硬な組合つぶしに出た。これには職場の公正な組合結成を監督する政府機関の全国労働関係局さえもが、ホテル側の不当労働行為に疑問を提出しているほどである。
 ボイコット戦術を打ち出した組合に対する支持が広がり、ホテルの会場を使用する団体が敬遠するなど、ホテルの利用者が減っている。
  だが、ボイコットは、宿泊客の60パーセントを占める日本人観光客の宿泊によって、効を奏していない。日本人観光客にボイコットを呼び掛けても協力を得るのは難しい。というのも、彼らが日本での予約をしているからだ。となれば、責任を問われるのは、労使の紛争中であることを知りながら、観光客を送っている日本の観光会社ということになる。
  組合のほうでは、現地の子会社に旅行社を送り込まないよう要請し、また、日本の本社サイド(日本交通公社、ジャルパック、近畿日本ツーリスト、阪急等)にも呼びかけているが、旅行会社の反応は冷ややかだ。
 本社は「現地法人の問題にはタッチできない」といい、現地の子会社は「日本で予約してくるお客にはどうしようもない」という。まさしく、多国籍企業が現地での労働問題に直面したときの無責任さが現れている。
  アメリカで最多の外国人観光客を送り込んでいるのが日本であり、日本人の観光が現地社会に与える影響は計り知れない。観光が現地にもたらす収入と雇用の増大は大きいだろう。
  だが、ハワイのリゾート開発と観光に見られるように、観光が現地の人々の生活権を奪う場合もあるし、パーク55のように、サービスを提供してくれている現地のホテル従業員の気持ちを逆なですることもある。
 日本の観光関連会社の社会的責任について、日本社会で議論がもっとなされ、現地の人々との国際的ネットワークづくりが望まれる所以である。

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