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DATUMS 1992.10
グリーンツーリズムの提唱

中澤 禮介  農林水産省構造改善局企画官

■なかざわ れいすけ
 1946年長野県生まれ。1992年より現職。


  農林水産省構造改善局長の依頼を受けて、グリーン・ツーリズムの推進について検討していた「グリーン・ツーリズム研究会」(座長:甕 滋農林業信用基金理事長)から、7月30日、「グリーン・ツーリズムの提唱―農山漁村で楽しむゆとりある休暇を―」と題する中間報告が発表されました。
  この結果の背景には、(1)週休二日制の定着、リフレッシュ休暇の導入等、今後連続休暇の増加が見込まれること、(2)国民の価値観が効率至上主義への反省から「物の豊かさ」より「心の豊かさ」を重視する傾向にあること、(3)国民の旅行感が受動的なものから、より能動的で自己実現にむけた旅を希求する方向にあること、(4)農山漁村地域(以下「農村地域」という)の活力が過疎化、高齢化等により低下しており、国土の均衡ある発展を図るためには農村地域の活性化が国民的視点からも要請されていること、等があります。
  同報告書では、農村空間を「ゆとりとやすらぎのある人間性豊かな生活を享受し得る国民共通の財産」であり、「居住空間」また「余暇空間」としてとらえ、都市にも開かれた美しい村づくり等により、「都市と農村の新たな共生関係を実現」しつつ、「都市の活性化を図る」ことが必要であり、グリーン・ツーリズムがこの役割を担うべきであると提言しています。 
  グリーン・ツーリズムは既に欧米諸国では、農村が長年にわたって育んできた自然、生活、文化ストックを活用し、農村で長期に余暇を過ごす形態として定着しています。
  例えば、オーストリアでは年間約2500万人のツーリストの大半が農村部での滞在を選択しているといわれています。
  また、ドイツでは「農村での休暇を」のキャンペーンの下、約2万戸の農家が民宿を提供していますし、イギリスでも農家の主婦を中心にB&B方式(Bed & Breakfast の略。朝食だけがついた民間の宿泊施設)等が定着しています。
  グリーン・ツーリズムの特徴は、大規模な開発に頼らず、農村の自然、文化、人々の交流等地域資源を最大限に活用するところにあり、本物の農業。・農村を気軽に楽しんでいただくことにあります。
  今後、グリーン・ツーリズムを推進するため、同報告書では、(1)宿泊施設やインストラクターの養成等農村側の受入体制整備、(2)農村地域の土地利用、景観保全のための協定等仕組みの検討、(3)国民の理解を得るためのキャンペーン等に積極的に取り組むことが必要だとしています。
  農林水産省ではこの報告を受け、今後モデル地区を選定するなどして、グリーン・ツーリズムの推進手法や整備構想のあり方について具体的な調査・検討を行うこととしています。
  なにぶんにも、グリーン・ツーリズムは緒についたばかりであり、今後、長期的な視点に立った施策の展開をしていくこととしていますが、何よりも広範な各界各層の皆様方の御支援、御協力をいただくことが、必要不可欠であると考えています。

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