[BACK]
DATUMS 1992.11
グリーンツーリスト

原子 和恵  フリーライター

■はらこ かずえ
 1962年東京生まれ。1985年津田塾大学国際関係学科卒業。(財)世界経済調査会、(株)プレスオールタナティブを経て、現在、環境問題、消費者問題などの分野でのフリーライター。共訳書に『絶滅のゆくえ-生物の多様性と人類の危機』(新曜社)、「月刊消費者」「日本消費者新聞」などにルポを連載。


  環境問題への認識が世界的に高まるとともに、消費者としての立場からも、環境問題解決のために消費生活のあり方を見直そうという運動が起こってきた。
  グリーン・コンシューマリズムと呼ばれるこのうんどうが世界的に広がったのは、1988年に、イギリスのジョン・エルキントンとジュリア・ヘイルズの両氏が『ザ・グリーン・コンシューマー・ガイド』という本を出版してからである。この本は、発売後1ヶ月でイギリス国内でNo.1のベストセラーとなり、その後世界各国で独自の版が出され、全世界で100万部以上売れた。日本版はまだ出されていないが、そのアイデアを取り入れて、スーパーや百貨店などを環境への取り組みの観点からランク付けした冊子は、東京や京都、大阪など各地の市民団体から各種出されている。
  『ザ・グリーン・コンシューマー・ガイド』は、電気製品や化粧品、自動車など一般消費者が購入する商品が環境に与える影響を解説し、環境の観点から商品や企業を評価、ランク付けした本である。同著には、旅行業についての章もあり、環境のためにより良い観光のあり方として、バードウォッチングやホエールウォッチング、ナショナル・トラスト運動や市民農園、農家を手伝うファーム・ホリデーなどを紹介している。そして、章末では、イギリス国内の旅行業者をABC順に並べ、その企業が扱っている旅行の種類と、環境問題に関連する企業の方針、環境保護団体への寄付や協力、その企業が実施している環境に関連したプロジェクトを紹介し、グリーン・コンシューマーとして推薦できる旅行業者には星印をつけた一覧表を掲載している。紹介されている旅行業者31社のうち、星印がつけられているのは8社である。
  日本では、旅行業者を環境の観点からランク付けした本はまだ見たことがないが、星印が付けられる旅行会社は一体いくつあるだろうか。日本にも、野鳥の会やナショナル・トラスト運動を進めている自然保護団体はあるし、都市と農村の交流の重要性も指摘されているが、旅行業との結びつきはまだ弱いようだ。むしろ、日本ではリゾート法の施行で、自然の豊かな地域にゴルフ場やスキー場が建設され、自然が破壊されて、リゾートに対する発想の貧困さが問題になっている。アメリカ有数の環境保護団体、シエラクラブは、シエラネバダ山脈を訪れ、その自然を愛した人々が作った団体で、現在も各地の自然を訪れる旅行を企画、提供している。本来、観光と環境は両立しうるはずである。そのためには、訪れる側に都合良く自然を改変するのではなく、ありのままの姿をなるべく破壊しないよう訪問するという発想の転換が必要だろう。日本自然保護協会なども、各種自然観察会を実施している。これらの自然保護団体などに自然に対する姿勢を学びつつ、観光と環境の新しい接点を広げていくことが、今求められているのではないだろうか。

[BACK]