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DATUMS 1992.11
再生可能なエネルギーを利用した地域おこしの旅

寺田 良一  都留文科大学教授

■てらだ りょういち
 1952年生まれ。東京都立大学卒業。東京都立大学社会科学研究科博士課程単位取得。佐賀大学講師、都留文科大学助教授等を経て、1992年から現職。専門・研究テーマは環境社会学、新しい社会運動論、日米環境比較研究。主な著書に・論文に、『現代社会を解読する』(共著、ミネルバ書房)、「新しい社会運動の争点としての環境・生活・地域」(国民生活研究)などがある。


  環境問題が深刻化する中で、資源枯渇や汚染のない風力、小水力、バイオマスなど再生可能エネルギーの必要性が言われているが、紙や空き缶のリサイクルなどと違って、その実態を身近にみる機会はあまりない。
  それらが世界で一番集中しているのは、カリフォルニアの風力発電地帯(ウィンド・ファーム)。清治や州の電力会社への買電の義務づけ、風力発電に有利な買電価格や税制により、1980年代に急速に普及し、現在1万数千台、出力140万kwとなった。風力だけで州の電力需要の2%(2010年には10%になる見込み)、太陽熱やコジュネ(電熱併給装置)などと合わせて14%が環境保全型エネルギーで賄われている。推進策によりコストも下がり、現在kwh当たり6セント程度と他の電源に劣らない。推進団体の「アメリカ風力エネルギー協会」では、最近パンフレットで見学ツアーを勧めている。
  わが国にも、中国地方の山間部を中心に、農協などが「農山漁村電気導入促進法」に基づき電力会社に売電している小水力発電が89施設(1施設平均155kw)ある。もともと戦後未電化の山村に自家発電的に作られた村の発電所が、中国電力の電力線開通後売電するようになった。鳥取県日南町のように、「エネルギーを持つ町」の標語のもと、70kwの旧発電所を660kwに更新した町もある。悩みは原価ぎりぎりに抑えられた6-10円の売電価格。400万kw以上と推定される未開発小水力をカリフォルニアのように積極的に推進する政策は、残念ながらわが国にはまだない。
  それなら市民の手でモデルをと、一橋大学の室田武氏とお茶の有機農家の臼井太衛氏らが、静岡県藤枝市滝の谷臼井氏の敷地内に作った再生可能エネルギーの実験の場が「水車むら」。小水力を利用した製茶工場で作られる、ここならではの国産無農薬紅茶が、村おこしのヒット作となり、山里の芽葺きの民家と水車小屋の風情を楽しみに訪れる人が絶えない。民家は、共同購入団体や学生などが援農や体験学習をする合宿所として用いられる。九州の「三連水車」を守った「西日本水車協会」とは「水車シンポジウム」を開催した。
  個人や観光施設で、さらには村おこし事業としても小水力発電や精米・製粉をしている例は多い。奈良県大塔村の「水車の里」は、水車による製粉、発電、ろくろまわしなどの設備を備えた村おこし施設である。奈良県上北山村や兵庫県波賀町では、温泉を小水力で加熱している。軽井沢の星野温泉も、小水力自家発電で有名である。富山県平村杉尾では、都会の子どもたちを自然の中で遊ばせる村おこしイベント「わんぱく山」で、子どもたちに木製の発電水車を作らせ、工作やコンサートの電源として使い、自然エネルギーの環境教育にも役立てている。これらを単なるシンボル的な存在に終わらせないためにも、余剰電力の売電を有利な条件で認めるなど、積極的な推進策が必要である。

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