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DATUMS 1992.12
生活協同組合、92年のヒット商品

平山 昇  (株)首都圏ふれあいサービス営業課長

■ひらやま のぼる
 1949年生まれ。明治学院大学卒業後、生活協同組合の組織活動に入る。生協Eコープを経て、現在、今年新たに設立された(株)首都圏ふれあいサービスで活躍中。


  70年代以降のこの20年間、日本の生協は、その間に労働組合が組織率を低下させたのとは逆に、組織を大きく拡大して1500万人を超える組合員数を擁するに至っている。生協の拡大は、地域で主婦を対象にした共同購入という業態を中心にすすんだのだが、その背景の一つとしては、70年代前半の「複合汚染」の時代に、若い母親たちが子どもの健康や将来を心配して安全な食べ物を求め、生協はそれに応えて安全な食べ物や産直品を供給することを事業のコンセプトにしてきたということがある。
  ところが近年、生協ではポスト共同購入ということが言われ始めた。そしてその背景としては、経済のソフト化・サービス化や、消費の個性化・多様化といった流れが進む中で、モノの供給を主体にした共同購入では限界があるということがあり、現在多くの生協で共済・保険・旅行・チケットといったサービス事業が取り組まれ出している。そしてその中で、ポスト共同購入の事業の柱として、日本生協連が現在最も力を入れているのが共済事業である。
  生協の共済というのは、全労済の共済や県民共済とは別で、日本生協連が元請認可をとった「たすけあい共済」という掛捨型の共済で、90年秋から始まって、2年少々で約35万人の加入状況となっている。全労済の「こくみん共済」や県民共済も同様の年間加入状況だというから、バブルの一方には掛捨型の掛け金の安い共済へのニーズがあるのであろう。
  かつて70年代に、子どもの健康や将来を心配して盛況に加入してきた主婦たちは、既に40代になっており、その現在の心配は自らの健康のことや、自らの将来のことになってきている。日本生協連の調査では、現在一家庭あたりの保険の掛け金などの生活保障支出は、年間で57万4千円になっており、3年前の調査時の48万円からも大きく増えている。
  さらにそんな状況の中で、事業としての共済とは別に、生協の組合員同士の非営利の助け合い活動というのが、全国的に取り組まれ出しているのも昨今の傾向である。そしてこの場合、援助を受けたいという人と同じかそれ以上、援助活動に参加したいという人が集まるという傾向がある。
  バブル経済は、資産格差と借金=金の拡大=物神崇拝をすすめたが、生活者の多数はそれに踊ることなく、現在ポストバブルの時代を生きようとしている。そして今後の日本社会の成熟とは、バブル経済よりもむしろポストバブルの時代の生活者の意識やライフスタイルの中に生じるだろうと思われる。
  残念ながら92年には、これといった生協のヒット商品はない。しかしながら、現在の生協の中心世代である30代から40代の組合員の中に、少しずつ新しい傾向が見えてきている。そしてそれらは、必ずしも従来型の商品=モノではなく、どちらかというとボランティアといった無形のものに近いのではないかと思われる。

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