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DATUMS 1992.12
注目したい新たな試み――NPOについて

大塚 裕雅  (株)社会調査研究所 主任研究員

■いぬづか ひろまさ
 1957年うまれ。環境・文化・コミュニティをテーマに自治体のまちづくり設計を担当。日本ネットワーカーズ会議のメンバーとして第1回、第2回の日本ネットワーカーズ・フォーラムを企画、開催。


  先の10月31日と11月1日の両日にわたり、川崎市にあるKSPホールでは、市民活動、公益法人、企業、行政の人など、延べ350人余りの人々が集い、様々な立場から意見を述べあったが、そこには共通するひとつの思いがあった。それは、日本社会の新しい未来像を語るものとして、非政府・非営利の活動や事業を草の根ベースで行う「民間の非営利活動団体」(NPO)を日本に創出することであった。
  そこには、政府・行政の第1セクターと大企業を頂点とする第2セクターによって肥大化、硬直化した日本の社会に弾力性と柔軟さを取り戻し、個人と社会の新しいあり方を求めていこうとする考えが背景にある。
  もともとアメリカで発達してきたNPOに注目するのは、そこに新しい社会の、新しい担い手になる可能性を見るからである。
  私たちは、経済的に豊かになればみんな幸せになれると信じて、今の経済大国をつくりあげてきた。その過程で非効率・無駄だと判断した多くのものを切り捨ててきたが、その結果、手にしたものは豊かさを実感できない生活、福祉や医療などに将来の不安が続く暮らし、安心して口にできない食べ物や水、等々の問題や矛盾である。そして、私たちのつくった社会システムがそうした問題や矛盾の解決に十分でないことが、徐々に人々の認識になってきた。
  これに対して、市民の側から自分たちで問題の解決を図っていこうとする動きがある。例えば、地域の老人を住民の手でケアする試み、患者と医者との対等な関係における医療のあり方を求める活動、安全な食べ物を供給できるシステムをつくる事業、等々である。それは、従来の市民活動とは一味違ったもので、行政や企業のたんなる批判や反対でなく、自らの価値において社会的・公共的事業やサービスを行い、かつ社会変革の新たな担い手として機能する思考の表われである。そうした活動がNPOに集約される。
  社会を行政セクター、企業セクター、市民セクターの3領域で区分し、社会の営みをそれらのセクター・バランスで見る考え方があるが、行政セクター、企業セクターが肥大・強化している日本社会では、まず市民セクターの復権を図り、セクター・バランスを戻すことが課題である。NPOはその有力な主体である。今後、日本でNPOが存立するには、制度自体の未確立に加え、乏しい財源、人材、情報、また企業や行政とのパートナーシップなど取り組むべき多くの問題があるが、冒頭にふれたフォーラムの成果が、その一助になることを期待したい。

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