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DATUMS 1992.12
ポストバブルと若者の消費――成熟消費を先取りしていた若い世代

村岡 清子  市場調査「NEXT」主宰

■むらおか きよこ
 1962年生まれ。1960年代〜70年代生まれの若い世代を専門とする市場調査「NEXT」を主宰している。商品開発、企画戦略その他に関する依頼調査(若い世代を対象とした市場調査)、および消費リーダー研究、団塊ジュニア世代研究などを行っている。


  バブルが弾け、その影響を直接受けない消費者の間にも「買い控え」ムードが広がり、「何となく、モノを買いたくない」という気分を持つ人が増えている。そこには、「今まで色々欲しがった事が不思議に思う」というような、消費欲求そのものの鎮静化がある。若い世代の間でも、バブリーで成金的なものは「ダサイ」価値となっている。しかし、そもそも、若い世代の消費は、その大半が付加価値消費であり、バブルに左右されにくいもの。つまり、若い世代の消費志向の変化を「バブル前とバブル後」という分け方で見るのは、的確とは言えない。
  バブルが弾け、不況が言われた今年(92年)、確かに若い世代の消費行動にも、ポストバブル消費とも言えるものが見られた。飽きの来ないもの、長く使えるもの等、定番商品が支持され、エコロジー志向も目立つようになる等、消費形態の堅実化があった。
  しかし、若い世代のこうした消費行動は、5〜6年前からのもので、ポストバブルの今になって、急激に変化したものではない。バブルが弾けたことによって消費形態が変化したというより、バブルが弾ける5〜6年前から、ポストバブル的なものを先取りしていたとも言える。
  ここ5〜6年、若い世代の消費決定基準には、「安心して買える」、自分にとって「リスクの少ない消費」かどうかの見極めがある。具体的には、「流行り廃りが激しくないもの」、目新しいものよりも、一定の評価の定まった「普通」のもの、長い年月を経て、受け継がれてきた定番的価値が志向されている。その一例に、ここ5〜6年間の、ラルフローレンやアニエスb、といった定番的ベーシックカジュアルウェアのヒットがある。これは、「定番だから流行した」というかたちでウケたもの。本来、“流行”とは、「流行っては廃れるもの」であり、「定番」が流行するということは、自己矛盾であったにも関わらず。
  かつて、流行の大半は、今までにはなかった「新しい」要素が魅力的に輝いて見え、目新しいからこそ、流行した。新しい価値(新しい流行アイテム)を購入するということは、一種の冒険(すぐに飽きて捨てるような無駄な買い物かもしれないという、賭)であり、そこにはリスクがつきものだった。しかし、最近のヒット商品のほとんどは、定番的要素を持ち、「新しさ」ゆえの支持ではない。そのほとんどが、かなり前からある価値で、既に評価の定まった「古い」ものでさえある。
  新しい価値を追求する必要のない程、情報が溢れ、豊かな時代に育った若い世代にとって、「新しさ」は、必要とされなくなっている。冒険より、自分の好きな世界の中でほどほどの流行を楽しむ、というのが、今の若い世代の消費へのスタンス。こうした消費志向には、「ポストバブル」という“今日”を、でなく、「成熟消費世代」の登場を見るべきではないだろうか。
  経済成長期にではなく、成熟社会の中で育った今の若い世代のいき方は、今後続く停滞期、変化の少ない時代全体のいき方を提示しているとも言えるだろう。

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