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DATUMS 1992.01
ホテル産業1992年の展望

稲垣 勉  立教大学助教授



  ホテル産業は第二の外資ブームとでもいうべき状況を迎えており、昨年の横浜グランド・インターコンチネンタルに続き、フォーシズンズが東京に開業する。これが1992年最初のニュースになることは間違いない。
  ところで単年度でホテル産業を展望する場合、大きく三つの局面に区分しかんがえることができる。第一は新規の大型参入に代表される、その年に起こる個別のトピックであり、第二は年度単位の短期的な景気や需要動向である。さらに第三番目の局面としてニーズ変化など環境変化に対応した、長期的ホテル産業動向におけるその年の位置づけを指摘することができよう。
  さて第二の短期的な視点からみると、1992年のホテル産業は前年の傾向を引き継いで、緩やかな下降を続けることになろう。その主たる原因が景気の減速であることは言うまでもない。しかし流通あるいは一般消費財ほど著しい需要低下や、実質的商品価値を問われるという厳しい状況に陥ることはなかろう。これはホテル利用の一般化が比較的最近起こったことであり、一般消費財ほどには利用者の商品価値が確立しておらず、厳しい消費行動が短期的には表面化しないことに起因する。
  しかし長期的な視点からみるとわが国のホテルは転換期にさしかかっている。わが国ホテルはビジネスホテルを除き、宴会、料飲に主たる収入を求め多機能化を図るという一定方向への進化を遂げてきた。この傾向はホテル大衆化を押し進め、大型機能ホテルを頂点とする産業構造をつくりだすことには寄与したものの、多様な業態を開発する能力、ニーズ変化に微妙に反応する能力はほとんど未発達のまま放置されてきた。これが第三の局面における問題点である。
  前述のフォーシーズンズ東京進出も、従来のわが国ホテルの路線を継承するものである限り、その年のトピックの域を出るものではない。来年以降に予定されるウェスティンその他も同様であり、漸次変化し多様化するホテルニーズに対応する新しい業態、新しいホテルのあり方への模索が望まれる。
  他方、供給状況に目を転じると、地価高騰にともなう立地不足は、再開発知己への進出で当座はしのげるものの、労働力確保はさらに逼迫することが予想される。これにともない水面下で進んでいるホテルにおける外国人労働者の問題が、表面化する可能性が強いことを指摘しておく。

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