[BACK]
DATUMS 1992.01
情報公開をどう使うか

奥津 茂樹  「情報公開法を求める市民運動」事務局長

■おくつ しげき


  わが国には情報公開法はまだないが、約2000の自治体が情報公開条例または要綱を制定している。そして、これらの制度を市民が積極的に利用し始め、交際費の使途明細、体罰事故報告書、小中高の職員会議録、ゴルフ場の農薬使用状況、予防接種の副作用報告、原子力発電所の事故報告書などなど、実に様々な分野で様々な情報が公開されている。このように自治体レベルでは、情報公開は「つくる時代」から「使う時代」へと入ってきた。
  こうした中で、最近私たちが特に注目しているのが、川崎市の市民グループ「R-DANかわさき」が作った『かわさき放射能マップ(放射性同位元素使用実施一覧)』である。このマップは、放射性物資を使っている施設の名前、所在地、連絡先物資の種類を地図に表したもので、川崎市や神奈川県が公開した情報に基づいて作られたものである。これは、いわゆる「アボイド・マップ」で、市民が危険を避ける(アボイド)ための判断材料として利用できるものである。
  これから川崎市内に住もうといている人だったら、このマップを見てなるべく近くにこうした施設のない場所を選ぶだろう。また、すでにそうした施設の近くに住んでしまっている人は防災態勢や周辺地域への連絡など事業者に問い合わせ、個人や自治会として説明を要求することもできるだろう。さらに、もしそれらが不十分ならば整備を要求していくこともできる。
  情報公開条例によってこのような身近にある危険について情報を公開させ、それに基づいたアボイド・マップを作ろうという活動はこれから各地に広がっていくだろう。たとえば、東京消防庁がビルの看板等の屋外広告物の落下の危険性について調査しているようだが、それについての情報公開を求める銀座、新宿、渋谷など繁華街ごとに落下しやすい看板をマップに表示することなども考えられる。先日も看板の落下事故でOLが大ケガをするということが東京であったが、危ない看板の場所を知ることでそういう災難は避けられるかもしれない。そして、何よりも、アボイド・マップの登場で、これまでは消防庁の改善指導に従わなかった業者が「看板にキズがつく」のを恐れて、風や地震でもビクともしない看板に作り替えることも期待できる。
  情報公開が「使う時代」に入って見えてきたことは、条例を「使う」ことによって情報を公開させるだけでなく、公開された情報を私たち市民がどのように「使う」かが大切だということである。行政の根強い秘密主義の中で生きてきた私たち市民は、そうした感性や能力を伸ばせずにいた。しかし、わずかではあるが行政の情報が公開されるようになってきた今、それらを基にして私たち市民から様々な提案をすることが可能になってきているのである。

[BACK]