[BACK]
DATUMS 1992.02
ロシア極東観光事情――現状と展望

荒井 信雄  社団法人北海道地域総合研究所専務理事

■あらい のぶお


  ロシア極東地域の観光は1987年までと88年までと88年以降とでは大きく変化しました。極東地域のほとんどが外国人なのに対して閉ざされ、インツーリストが国際観光業務を独占していた87年までは、極東には実際上通過型の観光しかありませんでした。ところが、88年から対外経済活動の規制が緩和され、極東にも、それこそ雨後のタケノコのように観光業務を定款にうたう会社が設立されました。新規参入企業の多くは労働組合傘下の「ツーリスト」社が所有するホテル、観光バスや各企業の従業員保養所などを利用して外国人観光客の受け入れに当たろうとしています。
  観光の面から極東のプラスとマイナスを見てみましょう。最大のプラスは、アウトドア指向の観光を中心に、きわめて豊富な観光資源を持っていることです。火山、温泉、野生動物、川を遡るサケ、最近NHKも紹介したカムチャツカ半島のはその典型です。フィッシング、ハンティング、トレッキング、バードウォッチングなどの愛好者にとっては、至るところにすばらしいフィールドがあります。最大のマイナスは観光インフラが整備されていないことです。ハバロフスクやウラジオストックのような中心都市ですら、外国人が宿泊できるベッド数は最大300程度です。しかも、温水や暖房といった基本的な条件も常に満たされてはいません。日本からのアクセスも、新潟・ハバロフスク間の航空路が夏は週4便ですが、それ以外は週2便と、まだ不十分です。極東内部のトランスポートは、それに輪をかけて不便です。
  極東では、観光分やでも燐国日本のマーケットへの期待が強いのですが、双方のパーセプション・ギャップも大きな問題です。極東の新規参入企業の多くは、観光を「小さな投資で速い資金回収が図れる」産業と見なしています。あらゆるサービスに対して外貨を要求し、ルーブルのレートがいくら下がっても、外貨建てタリフはかえって値上がりしてしまいます。そこで、例えば稚内発着5日間(往復フェリー利用)のツアーが20万円弱になってしまい、価格競争力はほとんどないのが実状です。
  今後は、観光開発のコンセプトづくり、ミニマムなインフラの整備、セグメンテートを絞り込んだマーケット開発、人材育成への協力などで、長期的なプログラムに基づく極東への協力が、観光開発についても必要になるでしょう。

[BACK]