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DATUMS 1992.02
何のために働くのか

きくち ゆみ  モンキーベイ自然保護基金理事

■きくち ゆみ
 本名・竹下由美。御茶の水女子大学卒業後、編集、PRの仕事を経て、テレビのレポーター、債権ディーラー、現在環境活動に専念。モンキーベイ自然保護基金理事、およびJEAN主宰。環境専門誌『アーシアン』に『菊地由美のワールド・ウォッチング』連載中。


  米国の銀行勤めを辞め、環境問題の事務所を開いて早1年が過ぎる。スタッフは全員無給どころか、殆どの運営経費を個人的に持ちだしている状況なのに、毎日が楽しくて仕方ない。切った貼ったのディーラー時代の蓄えがこんな所で役立って、あの3年間もあながち無駄ではなかったと思う今日この頃である。
  この年末も中米のベリーズにあるモンキーベイ自然保護区で過ごした。電気も水道もないジャングルで、雨水を飲み、川で体を流すといったなるべく自然を損なわない暮らしをする。ベリーズと言っても知らない人が多いが、1981年に独立した元英国領ホンジュラスと言えば分かるだろうか。四国ほどの小国で、その生物の多様性がコスタリカと並び世界の専門家から注目を浴びあている場所である。コスタリカもベリーズも激動の中米において平和を保ち続けている国で、環境保護に力を入れているという類似点がある。違うのはコスタリカでは国立公園を除くとほとんど熱帯林が残っていないのに対し、ベリーズではまだまだ手付かずの熱帯林が国土の6割以上を覆っていることだろう。
  しかし、ベリーズもコスタリカと同様の道を歩み始めている。最近のオレンジプランテーションとリゾート開発による森林減少は、半年ごとに訪れる私を毎回驚かす。と同時に、森林破壊が進んで手遅れにならないよう、この国おける自然保護区作りと環境教育を狙うモンキーベイプロジェクトへの意欲がますます湧いてくるのである。
  モンキーベイ自然保護基金では熱帯雨林を守りたいという人に1エイカー(1224坪)あたり10万円を出資していただき「熱帯林看護人」になってもらっている。その資金で環境教育センターを作り、熱帯林の買収、及び管理をする。現在日本、米国、ベリーズ三国の市民が参加しているが、嬉しいことに熱帯林看護人の数は日本人が一番多い。
  さほど多くもない有給休暇の消化もしないで働く日本人は、そのお金で一体何をしたいのか。いくらお金があっても、失われた命と過ぎ去った時間は買い戻せない。この瞬間は2度とやって来ないし、せっかく貯えたお金をいつか使うにしても、健康な地球と自分があってこそ。環境問題から逃れられる人はこの地上に1人もいない。環境破壊を加速させるか、軽減するか、あなたは自分の時間やお金や能力をどちらに使いたいですか。

*JEAN:Japan Envioranmental Action Networkの略で、1990年の国際ビーチクリーンアップへの日本の初参加をきっかけに結成されたグループ。年2回、日本全国約200ヶ所の海岸や河川でクリーンアップとゴミのデータ収集・分析を行っている。JEAN及びモンキーベイ自然保護基金の事務所は〒174 板橋区小豆沢2-21-17-B102 TEL:03-5970-0851

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