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DATUMS 1992.02
北朝鮮観光事情――本格的交流の時代へ向けて

高橋 均  観光・航空貨物労働組合連合会執行委員長

■たかはし ひとし


  激変する世界史の渦は朝鮮半島にも及び、戦争状態のまま分断された朝鮮民族はようやく対話と和解への道を歩き出した。“経済特区”設置を決めた北朝鮮。日朝国交正常化も近い。92年は政治的にも経済的にも人的にも日朝間の本格的な交流の始まる年だ。
  こうした動きに呼応するかのように日本の各旅行会社は北朝鮮ツアーを競って売り出した。北朝鮮側も観光客受け入れに力を注いでいる。朝鮮国際旅行社、青年観光社、東海旅行社などの流行会社で100コースものパッケージを取り揃えて、日本・ヨーロッパ・ラテンアメリカ・東南アジア諸国からの外客誘致をはかっている。ホテルもツーリストレートを用意し、15+1フリーの措置をとるなど並々ならぬ意気込みである。
 しかし、朝鮮戦争の傷痕が大きかったこともあって、受け入れ施設はまだまだ不十分だ。外客用のホテルも平壌・開城・金剛山などいくつかの地域にしか用意されていない。郊外の未整備な道路事情を加わって、現段階で訪問できる観光地は限られている。首都平壌は高層建築が建ち並び、驚くほどきれで立派だし、見学する施設も多い。ただ、街でのすべての表示は朝鮮(ハングル)文字であり、漢字やアルファベットは一切使われていない。そのため外国人が1人で街を歩き回るのは至難の業だ。私も91年6月に地下鉄に挑戦したが、ほとほと弱り果てた記憶がある。古刹の山門に書かれた漢字とホテルでEXCHANGEの表示を見たくらいだ。
  もちろん、こうした事情を北朝鮮側も先刻承知しており、現在ハード・。ソフト両面での受け入れ態勢の整備を急ピッチで進めていると聞いている。
  歴史の歯車はもう後戻りすることはあるまい。北朝鮮ツアーは着実に増えることは間違いなさそうだ。そればかりか意外と早く、板門店を通ってわずか二百キロほどしかない平壌とソウルを往来するツアーが誕生するかもしれない。

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