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DATUMS 1992.03
グラウンドワークの可能性

中村 陽一  消費社会研究センター代表

■なかむら よういち
 1957年生まれ。一橋大学卒業。書籍編集者、労働社会学・社会運動論。女性問題の研究、日本生協連で機関紙『生協運動』デスクなどを経て現職。市民運動の現場を歩きつつ内外の社会運動の調査・研究を進め、市民サイドから行政・企業への政策提言・共同作業に取り組む。市民活動・地域社会・消費社会分析・情報化・社会運動・生協運動・女性(男性)問題・家族などの領域で執筆・発言している。著書に「ポストフォーディズム」「ワードマップ家族」(共著)など多数。


  グラウンドワークという英国生まれの環境づくり活動が、いま日本でも注目されつつあるのをお聞きになったことがあるだろうか。
  昨年5月、英国の関係者からなる交流団(団長:P.ジェンキン元環境省)が来日。東京での日英交流会議を皮切りに、大阪、奈良、熊本などを巡り、それまでにほとんど断片的にしか伝えられていなかったグラウンドワークの全体像を明らかにして、少なからぬ反響を呼んだ。これを直接のきっかけとして注目が集まっているのである。
  グランウドワークとはどのようなものか。それは、政府と自治体あるいは企業が共同出資して、地域に、有限責任会社であると同時にチャリティ団体としても登録される、トラストと呼ばれる非営利の拠点をつくり、環境分野の専門スタッフを雇用し、市民参加、他の環境団体との協力、学校・大学との協力、事業委託・プロジェクトのスポンサー・職員の出向といった産業界からの支援などによって、幅広い意味での環境問題に対する具体的な解決行動を起こし、新しい地域づくりを進めていこうとするものである。
  その具体的な活動内容は、一般的な環境改善にとどまらず、企業用地の環境改善へのサポート、レジャー・リクリエーション・観光の振興、遊び場・コミュニティ施設の整備、環境教育および啓発活動、歴史的遺産の保全、都市近郊農業へのサポート、雇用トレニーングの実施、ボンランティア活動の推進、コミュニティ・グループの組織化と活動支援、身体障害者など社会的マイノリティグループの参加促進、イベント・キャンペーンの企画運営、市民活動への資金助成、調査研究の実施など実に多岐にわたる総合的なものとなっている。
  グラウンドワークの特徴は、政府機関・地方自治体・民間企業・市民団体・個々の市民のパートナーシップと実践を重視し、地域に存在する、アイデア、知識、技術、労力、資金などを有効に集約することによって、具体的な目標を実現させていこうととする点にある。グラウンドワークというネーミングには、基盤整備と現場での活動という二様の意味がこめられ、議論やキャンペーンに終わらず、実際に現場で行動を起こし、具体的な成果をあげようという姿勢があられている。
  このグラウンドワーク型の活動を日本でも実現させようと、日本グラウンドワーク委員会準備会が、日英交流会議を主催した(社)環境情報科学センターに事務局を置いて発足し、私もメンバーとして準備段階の討議に加わっている。私としては、これをどこまできちんと市民主体の地域づくりの活動として具体化することができるか、これからが正念場だといま思っている。

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