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DATUMS 1992.05
参加型の安全衛生のとりくみを

古谷 杉郎  全国労働安全衛生センター連絡会議事務局長

■ふるや すぎお
 1978年横浜国立大学卒業。神奈川県労災職業病センターをへて、現在、全国労働安全衛生センター連絡会議事務局長。著書:労働時間短縮への提言(第一書林、共著)/労災があぶない(東研出版、共著)/外国人労働者と労働災害(天明佳臣編、海風書房、共著)


  アメニティという言葉が定着してきたが、もとより自ら働く職場が快適であることを望まない者はいない。職場を点検してみたいので適当なチェックリストはないだろうかという相談をうけることがあるのだが、いわゆる○×式のチェックリストには疑問を持つようになってきた。
  一番手っ取り早いのは法律違反があるかないか(例えば労働基準法や労働安全衛生法)のチェックだろうが、そこで実現できるものは法律でも認められている最低の基準・条件でしかない(もちろん、法定の最低基準すら守られていない現状にも問題はあるのだが)。法律は実体の後追いでしかない場合がほとんどで、新しい作業態様や有害物資に対する対策としては無力である。法律でなくても誰(「専門家」と言われる人々)が決めた基準(チェックリスト)に照らして点検する方法でも、本質的には変わらない。何よりも、全ての項目が○でうまってしまったら、そこで止まってしまうことに○×式の限界がある。
  どういうチェックリストの方式がよいかではなく、これからの労働安全衛生活動はどうあるべきかという問題だ。キーワードは、rules based aproach(「法規準拠方」)からenab-ling aproach(「自主対応型」あるいは「参加型(労働者への機能付与)」)への転換。職場のことを最もよく知っている働く者自身が、実現(評価)するための知識や情報を身につけ、自ら参加してそれを実現していく以外に快適な職場の実現(それはたえず改善・向上されるものだ)はありえないだろう。専門家は主人公でも、ましてや決定権者でもないが、教育やアドバイザーとして重要な役割を負う。
  このような考え方に基づいてILOが作成した「安全、衛生、作業条件トレーニング・マニュアル」が最近翻訳された(財・労働科学研究所出版部発行)。これも活用して、講師の話を一方的に聞かされるだけの受身の講義ではなく、少人数のグループ討論、グループワークを重視したトレーニング講座が、全国安全センターや自治労などによって試みられてきている。
  ちなみにそこで用いられるチェックリストは、点検項目の各項目について述べられている対策がその職場で必要かどうか、優先順位は高いか、そして良い改善事例がないか、をチェックするようになっている。
  今通常国会に、政府から「快適職場の形成の促進」を一つの目的にした労働安全衛生法等の改正案が提出されている。残念ながら、労働者の参加(機能付与)という発想は欠如している。また、「政府が画一的に定める規準」に該当するかどうかが「快適職場」であるかどうかの「唯一の規準」となって一人歩きしないかどうか危惧するところだ。
  私たち自身試みを開始したという段階だが、「自主対応型」「参加型」の安全衛生活動が新しい流れを創りだしていくことを期待したい。

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