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DATUMS 1992.05
巨大リゾートに対抗する、自然の楽園“渡嘉敷”

古波蔵 善亀  渡嘉敷商工会会長、ジョイフルちんぐし&トカシクビーチサイドコテージオーナー



  沖縄本島・那覇市から30kmの海上に浮かび出た大小20あまりの島々。これが沖縄の島々の中でも最もすばらしい自然景観を誇る慶良間諸島である。渡嘉敷島はその慶良間諸島の中で最も大きく、最も那覇に近い。渡嘉敷島を上空から眺めると、世界有数の透明度を誇るサンゴの海が幾重にも色をかえて広がる。この美しい海に囲まれて暮らす島の人々の人情は、訪れる人を魅了してやまない。
  渡嘉敷島はその昔、中国に向かう進貢船の風待ちの島としての歴史を持ち、現在は沖縄海岸国定公園に指定されている。平地から眺める天空の美しさ、渚で眺めるサンゴ礁の海原の素晴らしさをもとより、島の北川の西山高知(海抜200m)の展望台からの眺望は沖縄の空、海、島が360度にわたり一望でき、沖縄広しといえども、これに勝る眺望はないというのが島民の自慢である。しかも島には折々の花が咲き乱れ、緑したたる草木は生命の賛歌を奏でる。こうした渡嘉敷島のかけがえのない美しさ、豊かさこそ、島の個性であり、体臭であると思う。
  自然を活かした渡嘉敷島観光の中心は、800mに及ぶ白砂のビーチがある阿波連と、こぢんまりとしているが世界有数の透明度を誇るビーチのある渡嘉志久に二分される。リゾート開発が日本列島を襲っている中、沖縄でも開発の動きはめざましい。大型資本が投入され、海岸線を中心に土地が買い占められている。いずれも豪華なホテルを中心に、広いゴルフ場、マリンレジャー施設、人工ビーチの青写真が描かれている。こうした大型資本の対極にあるのが渡嘉敷の観光だ。その主体は今も民宿である。民宿も、復帰の頃ブームのように建てられたが、渡嘉敷では昔から変わらず小さな資本で、着々と島の観光産業の一翼を担ってきた。洗練された客への応対こそないが、家族的なサービスとハートで巨大リゾートに対抗して頑張ってきた。大型ホテルが建ち並ぶリゾートでは、大切な自然の破壊が進んでいるが、渡嘉敷では、自然をそのままに活かそうという地元の人たちが中心となって“民宿村”を作っており、人工約700人のこの島に23軒の民宿がある。
  以前の民宿といえば、各部屋をふすまで仕切った詰め込み式スタイルが主流で、客も1泊2日程度のヤング層が多かった。現在では、民宿も個室形式に変わり、ダイバーを主に1週間程度の長期滞在型が増加し、幅広い客層に受け入れられ、リピーターが多いのが特徴と言える。食事は渡嘉敷の民宿の大きな魅力の1つだ。宿の主人が自ら海に出て釣ってきた魚がその日の食卓に上る。不漁の時でも地元漁協から新鮮な魚介類の供給を受けられる。
  渡嘉敷近海には、毎年冬から春にかけてザトウクジラがやってきて、勇壮なパフォーマンスを披露する。夏はマリンスポーツ、冬はホエールウォッチングを体験し、生の自然を楽しみ、リフレッシュできる島。多種多様なサンゴが棲息し、カラフルな熱帯魚が乱舞する渡嘉敷の魅力をぜひ体験していただければと思う。

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