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DATUMS 1992.08
国際航空貨物の将来とフォワーダー

寺田 一薫  東京商船大学商船学部助教授

■てらだ かずしげ
 1957年生まれ。1986年慶應義塾大学大学院博士課程修了。1990年東京商船大学商船学部助教授。主な著書に『現代の規制政策』(共著、税務経理協会)、『航空輸送のグローバル化と戦略的経営』(共訳、成山堂)などがある。


  航空貨物市場の性格の第一として、結合生産物としての側面がある。航空貨物には、貨物専用機によって輸送されるものと旅客機のベリー(腹)によって輸送されるものがあり、両者の比率は日本発着の国際線では半々程度である。ベリーについては、旅客需要量によって貨物輸送供給量がほぼ決定されてしまう。将来、成田空港二期工事や関西新空港開港によって旅客キャパシティーが増大すれば、貨物専用機による輸送だ代替され、結合生産物の特性として、実勢運賃の需要波動による変動がより大きくなるかもしれない。その際には現在以上にフォワーダーの運賃交渉力が問われることにある。
  第二に、航空貨物では、サービスの生産から販売までの垂直的構造に特徴がある。わが国の物流では、特に国内物流で顕著なように、実運送人自身が荷主へのマーケティングを行うことが多い。これに対し航空貨物ではフォワーダーを通さない直送は極めてわずかにとどまr、大部分がフォワーダーによる混載によって輸送されている。段階的に航空輸送事業の規制緩和が進行すれば、これほど容易なことではないとは思われるものの、航空会社が集荷能力を発揮し、その結果、フォワーダーの業務と直接に競合する可能性も、あるいは資本系列からみて航空事業への潜在的参入者としての側面を持つ航空貨物フォワーダーが航空輸送に進出する可能性もある。いずれのケースにしろ、現在の産業構造は、徐々にではあるがインテグレーテッド・キャリア化に向かうであろう。
  1990年度のわが国の国際航空貨物輸送量は、輸出が73万トン、輸入が85万トンで合計158万トン(うち約30%は継越)であった。過去15年間の年平均増加率は輸出で10%強、輸入で13%強になる。他産業の常識からすれば、オイルショックや円高にもそれほど影響されず高成長を維持してきたことはやや奇跡に映るのではないか。しかし1991年度の輸送実績は6月まで前年を上回っていたものの、7月から減少に転じ、12月から本年にかけて輸出の前年比で最大20%近いかつてない大幅な減少を経験している。
  これまで航空貨物の需要増加を支えてきたのは、産業構造の変化に伴う貨物重量当たり価値(とくにドル・ベース)の増加であった。このために運賃負担力と高速輸送へのニーズが増し、貿易額に占める航空化率を引き上げてきた。しかし輸入については1980年代後半から航空化率はあまり上昇しなくなっていた。既存製品の海運から航空へのシフトはやや一段落とみてよく、かといって航空貨物のお得意さんになるような新たなヒット商品も生まれにくくなっている。最近の航空貨物低迷には、短期的景気変動だけでなく、構造的な要因が含まれている。
  現在非常に貧弱であるわが国の空港や航空貨物用物流施設は、受給ギャップを発生させ、業界に利潤を発生させ、顕在化される輸送量を安定化してきた。しかし前記大規模空港プロジェクトによってある程度施設面の制約は改善されることが可能である。逆説的ではあるが、その時点で物流業者は、需給波動への対処などの経営ノウハウが厳しく問われる激しい競争時代を迎えるのである。

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