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DATUMS 1992.09
アーバン・アウトドアライフ

芦澤 一洋  アウトドアライター

■あしざわ ひろし
 新聞・雑誌・テレビ・ラジオ等でフライフィッシング、バックパッキングを中心にアウトドアライフ全般にわたる活動を展開。この分野の草分け的存在で第一人者である。1991年NHK趣味百科「フライフィッシング入門」講座担当。アートディレクター、デザイナー、そしてプランナーとさまざまな雑誌の創刊にも携わる。現在、アウトドア・ライターとして活躍しながら、独自の世界を築いている。


  アーバン・アウトドアライフは本来の野外活動とは別物です。それは確かです。とはいえ、自然との接触こそが何より大事と考えるライフスタイルを選んだ人間は都会にもたくさんいます。いや、都会に暮らしていればこそ、自然を求める気持ちが切実になるのだという言い方もできるかもしれません。自然指向の都会人が、市中にいながら、田舎の、あるいは自然の風物に接した気分を味わい心を和ませること、これがアーバン・アウトドアライフというものなのだと思います。いわば都会的日常生活のなかでの自然界疑似体験。当然のこと、それを探し求める気力と体力が必要になります。
  散歩、これは本物のアウトドアライフでも絶対に欠かすことの出来ない基本的行動のひとつですが、アーバン・アウトドアライフでもそれは同じです。アーバン・アウトドアライフの神髄は、博物学者を気取り、好奇心をもってひたすら歩くこと、この一言に尽きると思います。
  問題は何処を歩くかです。先ずは自然公園です。都心近くの自然公園で出合えるもの、それは樹木と草花です。このミニ森林のなかでは、もし望むなら観察と分析、すなわち学習、研究が可能です。例えば“都心におけるイネ科植物の成長分布”とか、“帰化植物の現状”とかいった感じです。
  また、観察とか分析といった学問的なことは好きではない、ただ情緒としての自然を味わいたいのだというファンもきっと多くいるはずです。そんな場合は、葉書大のスケッチブックとミニ水彩画セットを持参し、好みの風景を描きとめておくのも楽しみなものです。とはいえ、散歩は散歩、その途中で出会う多くの自然現象を心に記憶し、何がしかの感慨に浸る、それだけでも目的は十分果たしていると思います。夕焼け、巻雲、虹、木洩れ日、そよ風。あらゆるものが心に響きます。
  公園の樹林はまた多少の鳥や、昆虫類の観察を可能にしてくれます。ここでもテーマを見つけると貴重な研究、あるいは写真展、スケッチ画展の成果につながり、楽しめます。もちろん散歩に公園は限りません。例えば自然博物館巡り。これもアウトドアライフ気分を満喫するいい場hそです。更には、プラネタリウム、水族館、植物園、動物園。散歩の場はきりがありません。これらの場所は、いわば自然のエッセンス、都会なればこそのアウトドア感覚ということが出来るかもしれません。
  都心の散歩の楽しみにもうひとつ、トレジャー・ハンティング、宝探しがあります。百貨店やらホテルのロビーやらを歩いて、床や壁画に描き出されている化石模様を探し出すのです。さらにまた、市中に残された畑を歩いて石器や土器の破片を探す楽しみの抜群です。歩きを中心としてのアウトドアライフ。その片鱗を都会にいながらにして味わうのはなかなかオツなものです。

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