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DATUMS 1993.11
女心が、次代を担う――新しい「和」に見る、住まいの変化

朋澤 利恵  大和ハウス工業(株)生活研究所

■ともざわ りえ
 1967年生まれ。相愛女子短期大学卒業後、大和ハウス工業に入社。人と住まいの社会の関係のなかで生活を総合的に把握し、作り手側でも売り手側でもない、生活者の立場に視点をおくというスタンスで研究活動をすすめている。


  現代の女心こそが時代を、そして次代を変える。――「女心と秋の空」とは、気紛れであてにならない、変わりやすい女心を言ったものである。しかし、女心が変わりやすいのは、女性が“心地よさ”に対して敏感であるからだ。現代の女心とは、社会変化や文化の本質を自然体で受け止めながら次代をリードしていくココロを指す。
  自分の生き方を意識し、大切に考え始めた女性が社会に進出することにより、とりまく環境が微妙ではあるが確実に変わってきたことは、住まいという環境だけをとって見ても明らかである。例えば、家事代行サービスが1,000億市場に、ファックス、パソコンが一家に一台に、仕事や地域活動のためのスペースが家の中に、といったことは既にその兆しとして周知の事実となっている。
  しかし、それだけで満足して終わらないのが現代の女心でもある。合理化や効率追求はあくまで手段。女心が求めて止まないもの、それは快適さに裏付けされた「和」である。
  「和」。それには、和やか、和む、混ぜ合わせる、調和、和風、と、さまざまな意味が含まれている。そして現在、これらの意味を含んだ新しい「和」が住まいや暮らしの中で立ち上がり始めている。
  新しい「和」の一つに、集いやコミュニケーションシーンに見られる、「和やか」さがある。
  個のあり方、集いのあり方が変わり、フォーマルな集まりやコミュニケーションから、集う、招くという言葉通り、カジュアルで気楽なものへと変わりつつある。
  それは、堅苦しくなく、大げさでもなく、自然体で背伸びをしない、とても「和やか」なものである。こうしたリラックスできる雰囲気を重視する傾向は、当然、住まいのあり方にも表れてくる。
  もう一つ、家庭回帰や伝統回帰と言われる傾向がある。それは決して生活自体が和風になったということではない。洋風の生活の一シーンに和風のテイストを採り入れたものであったり、一つ一つのエレメントを和風と限定せずにコーディネイトすることによって和風を表現することであったりする。
  言ってみれば、自分らしさを表現するために、また、心地よく生活するために、日本の習慣やしきたり、k風土になじんだ心地よさを持つ「和風」を、現代の生活に合うようにうまくドレスダウンしながら、取り込んでいるのである。
  こうして「和」の文化を新しい文化とミックスしながら採り入れることで、「和」の精神が見直されたり、日本人としてのアイデンティティという自覚が芽生えたり、新たな発見や再考がなされたりするのであろう。
  住まいというのは本来“和む”場である。そして住まいとは「和」を育む場である。「和」を育むことで豊かな暮らしというメッセージを次代に伝達していく場であるべきなのが、これからの住まいなのではないだろうか。
  それを担うのは、「和」を愛し、自分にとって心地よい生活の場を常に求め続ける女心だと、期待したい。

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