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DATUMS 1993.01
「介護」を目的とする有料老人ホームの選択に疑問

池田 敏子  シニアライフ情報センター事務局長

■いけだ としこ
 1945年生まれ。日本女子体育大学卒業。大学での教職活動ののち主婦業に入るが、子供のアレルギー食生活、健康問題など暮らしにかかわる様々な問題について取材活動を続ける。生活科学研究所職員を経て現職。


  「高齢者の住まいと生き方」をテーマに、シニアライフ情報センターが発足してから半年以上になる。お年寄りの身になって「終のすみか」探しをお手伝いしようと、女性たちを中心にセンターをスタートさせたのが今年の4月。現在、会員数452名、この内相談者は147名となった。相談者は、現在唯一自由選択のできる有料老人ホーム(以下ホームと称す)の入居を希望する人達である。
  民間のホームは全国で約260施設、60歳以上の人口の0.5%、約1万8千人の受け皿となっている。「相談室」の目的は、この選択のサポートである。ホームが高額な買い物であるにもかかわらず、情報量の不足と、購買者が高齢であるため、自分で情報を得たり、現地に出向く事が容易ではない。そのために入居後に生じるトラブルのほとんどが情報不足からくる認識の甘さによる。またホームに一旦入ってから出るとなると、膨大なお金のリスクとエネルギーが必要になり、ほとんどの人が我慢を強いられての生活となる。
  「相談室」はそうした選択の間違いを未然に防ぐために、一般市民で作られた消費者のための相談者である。相談にあたっていえるのは、ホーム入居の最大の目的が「介護」だということだ。在宅で生涯を終える事のむずかしい今日、誰もが心配ではあるが、それがホーム入居の一番大きな問題だろうか。
  平成3年度の厚生白書によると、寝たきり老人(65歳以上)は4.6%、痴呆老人(65歳以上)の出現率は6.7%である。ホームの介護室はこれが基準となっている。この平均5%という把握が正しいかどうかは別として、ホーム入居後の暮らしは、長い人で20年を越える。その間の介護を要する期間は、一部の人を除いてそう長くはない(ホーム関係者)。あまりにも介護を重要視するため、元気な間の生活プランについて考えている人は非常に少ない。
  長い間築いた全資産の大半を投じて決断するホームの入居、家にはない設備、交友関係、そして何よりも「自分の時間」を十分に持てるのが、ホーム住み替えの財産になるはずである。これを生かすことのできない人は、住み替えの意味がないと思っている。5月から入居希望者のために学習会を行ってきた。最終回76歳になるが男性が「ホーム入居は止めにして、用意したお金で在宅介護の準備をしたい」との発言をされた。在宅で十分豊かな暮らしが可能な人は、この選択に大いに賛成だ。介護が必要になれば、民間のサービスを利用することもできる。早めに申し込めば特別養護老人ホームへの入居も可能だ。介護への不安がホーム入居の大事な条件を見失う事にならないよう祈りたい。

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