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DATUMS 1993.01
旅行業界 1993年の課題

勝野 良平  (社)日本旅行業協会専務理事

■かつの りょうへい
 1937年生まれ。1960年九州大学経済学部を卒業し、運輸省入省。大臣官房審議官、東京航空局長、気象庁次長などを歴任後、国際観光振興会を経て、1990年6月より現職。


  昨年上半期(1992年1月〜6月)までの旅行業界は、一昨年の湾岸戦争の痛手をようやく払拭したかにみえたが、下半期に入ると景気後退の影響を受けて、国内旅行、海外旅行とも需要が減退した。
  これまで比較的倒産の少なかった旅行業界も、バブルの崩壊、平成不況の影響を受けてJATA会員のなかにも倒産ないし廃業する会社が数社あった。倒産した会社のうちの2社は兼業部門の事業不振の影響によるものであったが、旅行者に多大な迷惑をかけてしまった。当協会ではこの事態を契機に弁済規約の改正を行い、還付手続きの簡素化、消費者優先の徹底をはかるとともに、営業保証金制度及び弁済保証金制度に関する諸問題についても専門員会を設置して検討することにした。日本の経済成長と海外旅行倍増計画などの諸施策もあり、順調に発展してきた旅行業界ではあるが、景気後退の影響は旅行業にも及んできた。
  大量旅行時代が招いた旅行需要の増大は、旅行業者の数を増やしただけでなく、旅行の取引形態や販売手法にも大きな変化をもたらした。前記の倒産した旅行業者の債務が会社の規模の割には多かったのは、主として会員組織を対象としたダイレクトメールや広告媒体を使い、全国規模で営業を展開していたことによる。マスメディアと通信手段の発達によって、従来の店舗中心のカウンターセールスや営業マンによる顧客セールスとは異なる販売が可能なことを前記の事例は図らずも示している。
  旅行業をとりまく変化は、旅行者の側にもみることができる。若者やリピーター層を中心に、従来のパッケージツアーに飽きたらず、より個性的な旅を求める層が出現している。旅行業者としては、これらの層をも取り込む商品企画が必要だろう。
  旅行市場の変化に対応するため、旅行業者の分社化がひところ活発であった。昨年は資本系列の異なる旅行業者が共同で新会社を設立し話題を呼んだ。今年も同様な動きがあるかどうかは分からないが、いずれにしろ、市場の変化と消費者ニーズの多様化に対応するため、旅行業者自身も変革を求められている。
  JATAでは変化する旅行動向に対応して、旅行業の実態からみた法制上の諸問題について検討するため、昨年、学識経験者も交えた「90年痔朝日の旅行業法制を考える会」を発足させ、今年には議論の結果を答申のかたちでまとめていただくことにしている。また、本年4月から実施される主催旅行から適用される表示に関するガイドライン及び公正競争規約が、業界の中に一日も早く定着し、旅行者と旅行業者との信頼関係がさらに強まることが望まれる。
  長期的にみれば、旅行業は政府の提唱する「ゆとりと豊かさを実感できる社会」を実現するための産業として成長していくものと考えられる。今年の旅行需要は、前半は依然として厳しい状況を覚悟しなければいけないが、景気が回復すれば、旅行需要もその回復が期待されるところである。しかし、旅行業者や旅行商品を選択する消費者の目は一段と厳しくなるだろうから、それに耐えうる体制を整備し、旅行業の再構築をはかることが、次の飛躍のために求められているのではないだろうか。

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