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DATUMS 1993.03
アジアの現代美術も面白い ―美術館活動の現場から

柴田 勝則  福岡市美術館学芸員

■しばた かつのり
 1951年福岡県生まれ。東京教育大学芸術学科卒業。専攻は日本およびアジアの近現代美術史。現在、館のほかの学芸委員とともに、1994年開催の「第4回アジア美術展」を準備中。


  福岡市美術館の特色の一つにアジアの近現代美術への取り組みがある。1970年に開館して以来、開館記念展をかわきりに、数年おきに「アジア美術展」を銘打ってアジア10数か国の現代美術を紹介する美術展を、また1988年以降毎年1回「アジア現代作家シリーズ」として若手現代美術家の個展を、それぞれ館主催で企画開催してきた。そのほかにも折にふれ、アジア関連の特別展をを開催するように努めており、この種の企画では全国に先駆けている。さらに、現代美術作品の購入にも力を入れ現在約300点におよぶ所蔵を数えている。古代より歴史的にも地理的にもアジアの交流の窓口として栄えてきたこの地の特色を美術館の活動方針に反映させた結果である。
  当然、アジア諸国との人物、情報、資料の交流も盛んであり、当館から毎年学芸員数人が調査研究のため各国に出かける。私も何度も訪れた国を含めアジアの国々計13か国で現地の現代美術の活動状況を見る機会を得た。
  そこで経験をまず一言で言ってしまえば「アジアの現代美術もなかなか面白いぞ」ということである。もちろん西洋美術に慣れ親しんだ眼から見れば、あるいはアジアの近現代美術には発展途上的な未熟な部分があるのかもしれないし、他方、あまりにもエキゾチシズムを刺激する伝統墨守的な一連の作品群が存在することも事実であろう。しかしどのような国であれ、心あるアーティストは存在するものであり、アジアの諸国においても近年、若い作家たちの興味深い元気い一杯の作品、仕事が眼に付くようになってきた。
  不幸にして、アジアにおいての美術の近代化とは、他の分野と同様に圧倒的な西洋美術文化の影響下にあったと言える。近代化イコール西洋化という図式にすっぽり陥ってしまっていたのである。近代のアジアの作家たちは、それまでの自国の美術伝統と西洋美術との間で時に模倣し、反発し、融合してきたといえる。もちろん日本の場合も例外ではない。しかし近年アジア諸国で、目にすることができる若い作家たちの作品は、伝統と現代という深遠かつ深刻な問題を充分に意識した上で、従来の伝統美術の系譜でも西洋の現代美術の亜流でもない全く新しい独自の様式を創造し始めつつあるのではないか。そうした萌芽が強く感じられてならない。
  美術を言語で語ることは難問である。本誌読者の方には海外旅行の機会が多い方々も多数いると想像するが、パリでルーブルやオルセーを、ニューヨークで近代美術館やグッゲンハイムを訪問されるように、アジアでも、美術館や画廊を覗いてみてほしい。必ずや新しい発見に出会えるものと確信している。

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