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DATUMS 1993.05
ステーションはコミュニケーションの場となりうるか

木村 法雄  東日本鉄道文化財団研究員

■きむら のりお
 1966年生まれ。1989年にJR東日本入社。1992年、東日本鉄道文化財団設立とともに、出向し、文化事業を担当している。

  創建当時のレンガをむき出しにした迫力あふれる空間を活用した東京駅の美術館が東京ステーションギャラリーである。
  このギャラリーで、3月13日から4月11日まで、「アドバタイジング・アート史展1950―1990〜広告という時代透視法〜」を展開している。
  昭和63年4月の開館以来、JR東日本所蔵の美術品を公開した「JR美術展」、「キュビズムのピカソ展」のような海外巨匠シリーズ、日本画の「守屋多々志展」、「磯崎新建築展」「鉄道とデザイン展」など多彩なジャンルの展覧会を行ってきたが、今回は、初めて広告デザインに取り組んだわけである。そして、発足一周年を迎えたばかりの東日本鉄道文化財団の単独企画であった。
  日本の広告デザインをリードしてきた東京アートディレクターズクラブの方々にご協力いただき、コンセプトを練り、作品を選定した。広告物そのもを批評するのではなく、広告を通じて、各人が時代を振り返ることができるようなものを目指した。
  ポスター、新聞広告合わせて270点を収集し、図録を編集し、限られたスペースにこれらを展示する方法など、文化財団を中心に検討を重ねた。
  我々が一番気になったのは、お客様が広告を通じて時代を振り返るという展示の意図がどこまで伝わるかということであった。
  そして、新しいお客様が増えるのではという期待もあった。「今回はデザインや広告を勉強している若者に見て欲しい。いつも絵画展は幅広い年齢層で女性が目立っていたが、様々なお客さまに親しんでいただける駅の美術館を目指す意味でも新しいファンを作りたい。」という気持ちが強かった。予想どおり、お客様の層は圧倒的に20代が多かった。アドバタイジング。アート史展のポスターを全国113の大学、専門学校に送付し、校内に貼っていただいたお陰であろう。もちろん、展示方法や小目についての厳しい意見も頂いた。しかし、初めての来館で感動したという若者や、広告を通じて、当時の自分を振り返ったという、我々の意図をよく理解してくれたデザイナー氏の意見もあった。私は、アンケートのを通じて、お客様と意思疎通を図る大切さと、企画の意図を伝える難しさを実感するとともに、大いに勉強させてもらった。
  駅を単なる通過点にすることなく、一時の安らぎを感じてもらえる空間にしていきたい、ということでJR東日本発足時に始まった東京ステーションギャラリー。もう一つの東京駅の顔である「とうきょうエキコン」とともに常にお客様に文化のメッセージを送り、お客様の反響を確かに受けとめながら、文化活動を行っていきたい。

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