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DATUMS 1993.07
遊ぶが勝ち、ふだけるもよし イノブータン王国(和歌山県すさみ町)

有田 文彦  イノブータン王国報道官

■ありた ふみひこ
 1949年和歌山県すさみ町生まれ。75年すさみ町商工会に経営指導員として勤務、現在にいたる。81年の「イノブタダービー」開始から「イにブータン王国」建国にいたるまで、事務局として企画立案にあたる。現、イノブータン王国報道官。


  猪と豚のハーフ、イノブタ発祥の地、和歌山県すさみ町にパロディ国家「イノブータン王国」が建国して早8年。「遊び心」から、競馬ならぬ「イノブタダービー」を始めたのが昭和56年ですから、イノブタとの関わりもかれこれ13年にもなります。
 すさみ町では、町全体がパロディ国家を形成しており、イノブタを大王に戴き、実際の町長が首相、観光協会長が熱烈列歓迎庁長官、漁業組合長がカツオ捕獲庁長官、農協組合長がレタス輸出庁長官を兼任。建国の年には中曽根首相に建国宣言書を手渡し、ミッチーこと渡辺通産大臣と友好通商条約を締結。JRの駅も「イノブータン駅」、町の電話帳も王国電話帳とくれば、ちょっとふだけすぎかな(注)と思いますが、皆さん本気です。
  紀伊半島南部、本州最南端近くに位置し、人口6,500人と極めて小国ですが、太平洋に面した27?のリアス式の風光明媚な海外線を有し、山間にも景勝の地が多く、良質の温泉も涌いていおり、
  “すさみ温泉 今宵の泊まり 袖に湯の香が ほんのりと”
  詩人の野口雨情が昭和初期にふらりと立ち寄った折にこう詠んでいます。
  伊勢エビ、カツオ、アワビ、レタスも採れ、もちろんイノブタもあって、四季折々に「味覚祭」も行われ、グルメの秋の料理コンクールは、「グルメンピック」と名付けられています。過疎の国とはいえ自然にも恵まれ、国づくりは順調に進んでいたのですが、物事すべてが順風満帆とは行かず、イノブータン大王と漫才師の今くるよさんとの婚約破棄問題、実在する南西アジアのブータン王国との国名問題など、様々な問題にぶつかり、真剣に頭を抱えたりもしました。しかし、春にはイノブタダービーを中心とする「王国建国際」、夏にはイノブタ音頭にのって大王以下王国民が踊り狂う「王国夏祭り」、秋にはすさみ町長の首相と若者たちが楽しく語り合う「王国通常国会」や料理のオリンピック「グルメンピック」、王国民が秋の一日を楽しく遊ぶ「王国運動会」など、総じてワイワイガヤガヤ楽しくやってきました。
  ときには、「お遊び」が過ぎるということで、ご批判を頂くこともあるようですが、地域に生活している自分自身が楽しくなくて、ねじり鉢巻で物事に取り組み、短兵急に結果を求めるのではなく、心にゆとりを持って、自分たちも楽しみながら、息の長い取り組みをしようというのが王国流なのでしょう。
  また、大王は童謡を集大成した世界初の「童謡公園」や潤いとやすらぎのある道「ラブロード」づくりなど、文化行政にも卓越した手腕を発揮されており、建国宣言書にうたわれているユートピア国家建設も、近い将来実現するものとワクワクしております。

(注)和歌山県には「ざ」を「だ」と発音する地方が多い。

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