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DATUMS 1993.07
遊び心をどういかすか ミニ独立国の進む道

白石 太良  流通科学大学商学部教授

■しらい たろう
 1937年生まれ。大阪府出身。大阪市立大学大学院修了。人文地理学専攻。1988年から現職。集落を歴史や社会とのかかわりから考察する過程で、ミニ独立国運動の地域との結びつきに注目。サミットなどを通して提言している。共編著『人類集団の空間構造』(晃洋書房)『人文地理―風景・空間・知覚―』(建帛社)。


  1993年3月末、北は北海道浜頓別、南は九州の福岡まで13のミニ独立国が集まって、「第12回ミニ独立国サミット」が開かれた。議長国となったのはアルコール共和国(新潟県真野町)のサミット会場はユーモアと熱気に溢れ、遊び心を大切にした民間の地域づくりが、着実に歩みをみせていることを示した。
  国家のパロディで地域振興をはかろうとするミニ独立国は、おもしろさを強調し、マスコミによるパブリシティ効果に期待する面が大きかった。それ故に、80年代後半のブームのあと、話題性が失われるとともに消滅していった国も多い。かつて指導的役割を果たした国のなかにも、パロディを脱して日常活動に力を注ぐものがみられる。最盛期に200カ国を超えたミニ独立国のうちで、今なお当初からの事業を展開するのは多い目に見積もってその半分であろうか。サミットにしても、初めのころに比べると参加国が少なくなっている。
  とはいえ、地道な活動がようやく花咲きはじめたミニ独立国や、地域活性化策として行政が積極的にかかわるミニ独立国も出てきた。新しい独立国の建国は依然として続いている。それだけに、アルコールサミットの熱気は、曲がり角を通り過ぎたミニ独立国が、次のステップに足を踏み入れた証明であった。
  現在活動中のミニ独立国を眺めると、目的、組織、活動内容は様々だが、いくつかの共通した特徴が見受けられる。
(1)地域の風土や文化へのこだわり。最も地域らしさを表すものを強調する。
(2)地域住民との連帯。地域に根ざした活動として展開される。
(3)目的や考え方の明確化。なぜミニ独立国なのか主張がされている。
(4)社会・文化的側面の重視。必ずしも即効性や経済的効果を期待しない。
  これらの特徴から、ミニ独立国に地域をみつめる方向性のあることがわかる。ミニ独立国は、その方向性を国家のパロディという切り口でとらえる運動といえよう。実際の国家と同じように、地域には自然と歴史があり、人と人とのつながり、文化とか郷土愛といった精神的まとまりがある。ミニ独立国が「独立国」を名のるのは、地域をこのような総合的な生活空間とみる考え方の現われといえる。
  ミニ独立国の建国目的は、特産品開発、観光客誘致、市民運動、都市・農村交流など
  多様だが、自分たちの生活の舞台と関係なしに進められる事業や行事は長続きしない。高度経済成長以来、忘れ去られようとしている地域を見直すための社会運動、それがミニ独立国運動なのである。
  ミニ独立国で大きな意味を持つ「遊び心」は、人々がゆったりとした気持ちで考え、行動し、楽しむ手だてであった。それをマスコミが取り上げるかどうかは別の次元の問題だろう。結果が出るには時間がかかるが、地域に誇りを持ち、住民の理解と参加が得られれば、前途には明るいものがある。人々が、本来の人間らしい暮らしの場とリズムを取りもどすためにも、光り輝く地域に住み、体験し、少なくともそれを観てみたいと感じる。だからこそ、これからのミニ独立国の動きには目がはなせない。来年11月の第13回ミニ独立国サミット(かに王国・兵庫県城崎町)が楽しみである。

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