[BACK]
DATUMS 1993.08
行ってみたい土地 東と西でどう違う?

渡辺 久哲  TBSメディア企画局メディア企画部

■わたなべ ひさのり
 1959年栃木県生まれ。1985年東京大学大学院社会心理学専攻修士課程修了。東京放送(TBS)に入社し、以降調査部で視聴者調査、ライフスタイル調査などを担当する。著書に『朝シャン世代の消費トレンド』(共著)、『ブレーン』『流行色』等に論文を多数執筆


  日本人のレジャーといえば何といっても旅行・行楽だ。テレビ紀行ものやグルメツアー、旅先案内ものなどの人気はあいかわらず根強い。また情報番組だけでなく、ドラマでも様々な地方ロケをふんだんに取り入れたものが好まれている。
  本稿のテーマは最近の国内旅行先としてどんなところが好まれているか、関西と関東で違いを比較してみることだ。しゃれたブティックの立ち並ぶ都会のトレンディスポットか、掘りごたつの似合う鄙びた温泉町か、それとも南の島の白い砂か…。
  ここで用いたのはTBS総合嗜好調査の最新データ(1992年秋)で、「Q日本の土地の中で、行ってみたい、あるいはお好きなところはどこでしょうか」という質問の回答を検討することにした。この調査は、東京地区(東京23区と都下)および阪神地区(大阪と神戸を中心とする地域)という2つのエリアを調査対象にしているので、とりあえずそれらを関東と関西の代表と考えていこう。表は、それぞれトップ10の比較表である。結果からいえば、「行きたい土地」に関して東西で好みは基本的によく似ており、10のうち7つまでが重なっている。しかし、北海道と沖縄の地名が多く、関西で6つ関東で5つも登場する。国内旅行といってもやはり本州以外のところへ足を伸ばしたいという点で考えは共通しているようだ。近年は円高のために、むしろ海外に行ったほうが安上がりということもあって、足が遠のき、その分憧れが高まるということもあるだろう。ちなみに、1位の札幌と2位の沖縄本島の人気を層別に見ると関西も関東も若年層の男女で高くなっている。
  図は今度は、関東と関西の人気のの差に着目して整理したもの。ここから伺えるひとつの傾向としては、関西人は東(関東以北)に対する憧れが強く、逆に関東人は西(関西以南)に対する憧れが強いということ。ふだんは行けないところに行きたいと思うのは人情だ。具体的な地名でいえば、関西人の側からは札幌、阿寒・摩周湖、富士山、軽井沢、熱海など、関東人の側からは、京都、奈良、瀬戸内海、岡山・倉敷などである。これらの地名はいずれも「全国的にそこそこ有名なブランドだが、ふだんなかなか行けないから何かの機会に一度行ってみたい」といった気持ちから来るのものではないか。
  そうしてもうひとつ見落とせないのが、関西人の好む<西>と関東人の好む<東>だ。前者には城崎・丹後半島、小豆島、種子島・屋久島・奄美大島、後者には仙台・松島、尾瀬、陸中海岸などいずれも渋めだが自然が豊かで風光明媚な土地柄も多い。これは繰り返し訪れることで味わいが深まるスポットといえるかもしれない。
  以上のように、関西人の目と関東人の目を交差させると、「行ってみたい」の様々な意味と重なりが見えてくるようだ。

[BACK]