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DATUMS 1994.11
アートキャンプ白州

斎藤 朋  アートキャンプ白州実行委員

■さいとう とも
 1965年山形市生まれ。フリーで執筆活動、イベント、公演の制作を行っている。「白州・夏・フェスティバル」には、89年からボランティアとして運営・演出に関わるようになり、今年からアートキャンプ白州実行委員に。


  白州(はくしゅう)では、はたしていくつの場所で「芸能と工作」が行われてきたことになるだろう?神社で、川で、山の舞台で、田んぼで、畑で、美術工作物で、栗林で、竹のドームで、農場で、土の舞台で、道ばたで―。行為された時間帯も、日の出の時もあれば深夜に及んだこともある。場所も時間もおよそ正確には挙げられる人などいないし、そんな必要もないだろう。
  それまで東京を拠点に、地上のあらゆる場所で踊り続けてきた前衛舞踏家・田中泯と舞塾の若者たちが長野県と境を接する山梨県北巨摩郡白州町に移り住んだのは1985年のこと。「昔ながらの農作業の中に踊りの源がある」ことを確信して身体気象農場を開設し、農舞両道を歩み始めたのである。南アルプス山麓の人口4,500人ほどの町に、劇場や美術館などの文化施設があるわけでもなかったが、何よりもゆたかで魅力的な自然、風景、水、農村の伝統がそこには横たわっていた。
  数年をへて農村での生活は軌道に乗り、地域の人との関係もゆるぎないものとなった。そこで今度は、依然都市での生活、仕事を続ける芸術家、クリエイターたちと実行委員会を作り、「都市と農村という二分法を越えて、その境界に新しい文化と生き方をを探ろう」と88年、『白州・夏・フェスティバル』を立ち上げたのである。地域の方へのお礼をこめて。
  おもなプログラム内容は、「舞踏・芝居・音・美術・物語・建築・映像・農業」。ほかに、伝統芸能、大道芸、パフォーマンス、シンポジウム、ワークショップ、パーティーなど、国の内外を問わず、およそ実験的、先鋭的なアートから土臭い伝統芸能、工芸までが、全く脈絡もなく白州の青天井のもと、様々な場所で繰り広げられた。訪れる人が町民、都市生活者、外国人と多様であれば、環境、気象もまた多様。芸能者、参加者たちは、刻々と変貌する景観、光、風、雨に反応しながら、その昔地球のどこでもあったような<祭り>を体現したのである。
  美術家たちは、休耕地を借りるために直接地主との交渉から始め、耕作するかのように工作を続ける。今では、白州の田畑に40数点の美術工作物が日一日と表情を変えながら点在するようになった。

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