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DATUMS 1994.12
心の常備薬

井上 忠志  NEC社会貢献推進室フィランソロピー担当課長

■いのうえ ただし
 1952年生まれ。SE、SA,オフィスプランニング業務を担当。2年前に現在の部門に異動。その経歴と地域社会活動の経験を生かした社会貢献プランを企画立案実施している。居住する茨城県藤代町では、ボーイスカウト活動や「こどもリズム体操クラブ」の主宰など青少年活動を通したまちづくりに情熱を注いでいる。


  この薬の効能は次の通りです。
(1)心の内面からポカポカと暖まります。(2)広い視野で社会が見えて来ます。(3)人と人とのネットワークが広がります。そして、(4)自分の優しさを発見することが出来ます。
  この薬はいつでも、思いついた時に服用することが出来ます。副作用は一切ありません。この薬は一度服用された方ならば、ご自身で再生産することができますので、新たにお買い求めいただかなくても結構です。
  この薬は「ボランティア」という薬。上手に服用すれば心の常備薬となります。当社ではまだ利用実績1年半ですが、その効果は驚くべきものが有ります。
  この薬を1年半にわたって服用された方から私の元に1通の葉書が届きました。この6月で定年退職した社員OBのY夫さんからのものでした。「(前略)……38年間に渡って会社にはお世話になりました。……(中略)……この1年半の間に学んだボランティアの世界をこれからのライフワークとして社会のお役に立てればと思っています……(後略)」。そうか、Y夫さんは定年後のことを考えていろいろ参加していたんだ。講座で、若い人たちに混じって年齢差など感じさせず、楽しく活動に参加している彼の姿を思い出しました。
  私たちが社員に対してボランティア体験の機会提供の場として行っているプログラムは月に1回。興味はあるけどどこから入っていいかわからない、きっかけが無い、といった社員を対象にアフター5や休日に開催しています。社会福祉、国際貢献、文化、スポーツ、環境保護等の様々な分野を取り上げ、新入社員からY夫さんのような退職直前の社員まで、様々な年齢、職制の人たちが参加して来ます。会社がそこまでやる必要があるの?という慎重論もあります。しかし、この薬の効能は多くの参加した社員たちの声が物語っています。
  「ボランティアって簡単にできちゃうんだ」「もっとやりたくなった」、「様々な人たちと交流できてよかった」、「新しい価値観を見つけ、視点が広がった気がする」、「自分の生き方を変えてみようと思った」等々、何か発見した社員の率直な声です。そして価値観を共有した社員同士で自主サークルが育つこともあります。ボランティアというアクティビティを通して社員間のネットワークも広がっています。
  このところ、この薬は様々なところで手に入るらしく、ブームだ、などといわれる方がいらっしゃいますが、ブームはいずれ数年で廃れてしまうもの。私はウェーブだと思っています。そのうねりが企業で働く人たちの間でどんどん大きくなっています。

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