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DATUMS 1994.12
たりなかった―水 ハウステンボスの「実験」

津下 淳一  ハウステンボス(株)広報宣伝課長

■つげ じゅんいち
 ハウステンボス株式会社にて、PR全般にたずさわる。


  この夏、記録的な少雨で6月に水不足が表面化、そろそろ給水制限が始まるという7月12日に海水淡水化プラント本格的に稼動を始めた。その翌週には24時間フル稼働に入り、日に1100トンの淡水を生み出す。ハウステンボスで必要な上水1300トンの日量を確保するため、9がつからは200トン分のプラント一基をリースして加え、フル稼働のまま現在に至っている。早くてなたね梅雨、あるいは6か月後の梅雨の季節までまとまった降雨はないと予測されているので等分はこの状態が続きそうだ。
  佐世保からの上水は1トン207円。逆浸透法によるハウステンボスの淡水化プラントで得る淡水のコストは1トン約600円。今年夏の渇水による非常事態にいたるまで、オープン後3年間、このプラントは本格的に使用されることはなかった。では、約500億円をかけたこのプラントはそもそもなぜ建設されたのか。
  お客様を迎えるレジャーの場として非常事態に備えたというのは当然のことである。しかしプラント建設の背後には、トータルな「まちづくり」実験としてのハウステンボスと、その中心をなす水についての考え方がある。
  閉鎖性の強い、従って汚染されやすい内海・大村湾に面するハウステンボスにとって、大村湾の水の汚染は絶対に避けなければならない。
  ハウステンボスから運河や湾に排水される水は一滴もない。中水プラントで下水を高度処理し、植物への散水、トイレの流し水として水のリサイクルをしている。天然ガス利用の発電プラントの冷却水としても利用している。通常排水基準はCOD濃度20ppm以下。ハウステンボスでは4段階の処理で5ppm以下になっているが、それでも排水はしない。
  この中水を使いきれないときは全長2キロのパイプラインからなる土壌浸透装置へ流し、そこにあいている小さな穴から地中に返している。地中のバクテリアによる浄化が行われ、運河や海へと自然にしみだしていくことになる。
  ハウステンボスの敷地はもと10数年放置されていた県の工場団地用地である。土壌改良工事とともにコンクリート護岸壁をすべてこわし、自然石の石づみに作り直した。土、植物、バクテリアなどによる自浄作用ととりもどすためである。
  ハウステンボスでは運河の中だけでなく大村湾全体に清掃船を走らせ、浮遊ゴミを収集し、集めたゴミの分析も行っている。また、定期的に汚染濃度検査をしている。
  ハウステンボスは統一されたコンセプトデザイン、ハイテクのインフラ整備による、理想的な生活空間創造の実験の場である。エコノミーとエコロジーの共存、未来都市の創造実験―海水淡水化プラントはその一環としてである。

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