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DATUMS 1994.1
1994年宿泊産業予測

横山 文人  亜細亜大学経営学部講師

■よこやま ふみと
 1961年生まれ。ミシガン州立大学大学院(公園・レクリエーション資源学科)博士課程終了。(Ph.D.)三菱総合研究所研究員を経て現職。


  最近の日本の経済環境は、1993年12月6日付けの日本経済新聞によると、「景気底冷え 回復遠のく」の大見出しで「今年度下期の(景気)回復期待が崩れ、経営者や消費者の心理は冷えこみ、消費がさらに落ち込む悪循環に陥っている」と報道されている。
  また、宿泊需要についてみると、平成5年版の観光白書では、平成4年度の国民一人当たりの平均宿泊旅行回数を目的別に次のように報告している。
  ・観光   1.35回(前年比91%)
  ・兼観光  0.22回(前年比92%)
  ・業務   0.31回(前年比84%)
  観光関連の宿泊旅行回数については、前年度と比較して約10ポイント減少し、業務についてみると、実に15ポイントも減少している。このような宿泊需要の減少傾向は、景気の低迷に対応した経営者の出張、宴会等に関わる経費の削減ならびに消費者心理の冷え込みによるレジャー関連行動への消極的な参加といったことが主要因であると考えられる。
  こうした宿泊産業を取り巻く厳しい経済環境と宿泊需要の落ち込みを踏まえ、94年の宿泊産業の予測を試みる。宿泊産業の指標としては、都市圏(東京・大阪)の主要ホテル平均客室稼働率に関する時系列データ(85年1月〜93年9月)を用い、時系列分析(ARIMAモデル)に基づく94年の月別平均客室稼働率を行った。
  94年の平均客室稼働率の予測値をみると、東京、大阪いずれの都市圏においても全体的な減少傾向がうかがえる。東京圏においては、87年から91年まではピーク時には(10月あるいは11月)90%前後の非常に高い稼働率であったものが、バブル経済の崩壊を契機に年々減少を続け94年ではピークにおいても73%(10月の予測値)と数年前と比べると約20ポイントの著しい減少を示すと予測される。大阪圏においても、90年の4月から6月の90%前後の高い稼働率をピークに、年々減少を続け94年のピークにおいては74%(10月の予測値)と東京圏と同様に数年前のよりも16ポイントの大幅な減少となることが予測される。
  以上のように平均客室稼働率を手掛かりとして94年の宿泊産業の予測を行ったわけであるが、宿泊稼働率は宿泊産業のベースを表す指標であることから、こうした減少傾向は稼働率だけではなくある程度の誤差を伴いつつも宿泊産業全体の傾向を予測していると推察される。しかしながら、この予測は過去のデータだけに基づくものであるので、今こそ、現在の顧客主導市場(Customer-driven Market)における市場環境と顧客需要を的確に把握し、明確な経営ビジョンに基づく積極的なマーケティング戦略を展開していくことが、減少傾向を示す予測を変え得る重要な経営戦略ではないだろうか。

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