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DATUMS 1994.02
公私混同人脈からの企業

桝井 一仁  (株)ケービーシーシー代表取締役

■ますい かずひと
 1953年生まれ。75年早稲田大学法学部卒業、同年日本鋼管(NKK)入社。イギリス留学を経て、83年総務部海外法務室勤務、87年、NKK在籍のまま、カナダ・ブリティッシュ・コロンビア州政府通商産業省商務官となる。89年10月NKKと共同出資で国際ビジネスコンサルタント会社ケービーシーシー設立、社長に就任。著書に『EC独禁法ハンドブック』『アフター5の達人』『ガット再構築』他多数。


  サラリーマン生活で最も楽しいことと言えば、出世と人との出会い?であろうか。最近の合理化風潮や、企業スキャンダル、サラリーマン重役の首の軽さなどをみるにつけ、出世よりも人との出会いのほうが楽しいと感じる人が増えているような気がする。私はこの人脈を利用してサラリーマンでありながら企業内企業家として会社を合弁で設立してしまい社長になってしまったが、その理由は単純明快で、今まで知り合った世界中の人と仕事がしたかったからである。課長であれば、例えばカナダの弁護士を利用するに際して上司の許可を取らなくてはいけない。そんな手続きさえもわずらわしくなり、社長になることをきめたのである。わが社はたった2名の会社だが、そのネットワークは世界16都市にまたがり、毎日世界中と交信しあい、情報の収集とコンサル活動を行っている。
  そもそも自分のネットワーク史の始まりは英国への留学であった。ロンドンの大学の同じクラスに集まった連中といつかは楽しい仕事がしたいという発想が芽生え、その後、法務関連の仕事をしながら世界中の弁護士・ビジネスマンを知り合うことができた。ただ知り合うだけではない。自分の価値基準で彼らを選択し、友として、家族ぐるみのつきあいが一生できるかという基準で選んで「この人」なのである。もちろん交渉の相手方であった弁護士もいるし、仕事とは全く関係のない人もいた。ところが彼らと話をしていると仕事が生まれてくるのである。先般フランクフルトへ行く機内で隣に座った人がSteinwayという世界的に有名なピアノメーカーの方で、何気ない話から仕事の話になり、今ではコンサルをしてあげている関係である。
  一人で世界を飛び回っていると、彼らの励ましが何よりのエネルギーである。彼らの応援あればこそ事業が成り立つ。このネットワークの早さは親会社である一兆円企業にも対抗できるものである。それが最大のセールスポイントでもある。今もジュネーブのガットに詰めているロビイストからどんどんファックスが入ってくる。これを新聞記者や役所の人間に流すと、翌日には記事になっている。金儲けではない。そしていつかまた彼らに助けてもらうことがあり、また僕が助けることもある。こうしてネットワークは際限なく広がる。公私混同していなくては世界を見つめることは不可能である。自分の価値観で付き合う人なら、公私を分ける必要はない。大切なのはこの価値観を養うことである。
  もちろんJALにも知り合いが多い。時間に融通がきくときには彼らの乗るフライトを利用するし、機内でも原稿を書く。そしてそこから新たな出会いが生まれる。全く仕事と無縁と思うところに仕事を持ち込むことで、既成概念にとらわれない発想を生むことができるのである。これは自分のボーダレス化の第一歩にもなる。

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