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DATUMS 1994.04
旅の味つけは「軽味」でキマリ

千田 圭子  リーマン・ブラザーズ証券会社

■ちだ けいこ
 1961年東京生まれ。慶應義塾大学文学部卒業後、数々のアルバイト、仕事を経て、ニューヨーク州立大学大学院でMSを取得、現在に至る。アジア(タイ、マレーシア、シンガポール、インドネシア、ブルネイ、台湾、韓国、パキスタン、ベトナム、フィリピン)を中心に世界各国を旅する。


  私が普通どんな旅をしているかといえば、 大抵は旅の相方S子と、思い立ったらあとさき考えず、日常生活の瑣末なことはとりあえずおいといて、短期間でもいいからとにかく知らない国へ行ってしまう、いわゆる「高飛び型」もしくは「逃避行型」の旅だ。昨年などは結構小まめに、香港2泊3日、タイ3泊5日、韓国1泊2日、シンガポール…等々の、近場、安価、めしがうまいの3ポイントを押さえたご近所の国々への「ミニ逃避行」を繰り返した。
  ここでやや問題となるのは、何からの逃避かということだが、仕事のこととか、親戚のこととかといった大人っぽいことや、家の掃除とか、洗濯とかといった、やらなくていけないけど面倒くさい細かいことの数々といったごく瑣末なことにすぎない。そんなことでいちいち海外旅行に行かなくてもいいんじゃないか、という意見も多いと思うけど、そんなことでいちいち海外旅行に行ったっていいんじゃないか、というわけである。
  こんなわけで出かける旅でも私(と旅の相方S子)の場合は、もう空港へ向かう車の中から、何だか気分爽快になってきて、「いやー何度来てもこの道はわくわくしますねー」なんて言いはじめて、お隣の国、韓国の街角を歩いていても、やっぱりいつもと違う風景に「うれしいじゃないですかー」と、簡単に喜んでしまえる。ご参考までに典型的な旅の一日を描写すると、朝はだいたい10時頃に起床、お昼を食べに行き、帰ってきて昼寝、夕方頃また夜の巷に繰り出すというパターン。(暑い国の午睡は常識である、念のため)。こう書くと、あまりに怠惰では…という気もするが、あくせく観光地を巡ったところで、あまり印象に残らないし、スケジュールに終われて楽しくない、というのも偽らざる実感である。
  さて、こんな私の理想の旅はどんなものかと考えてみると、究極は、面倒くさいことや、大人っぽいことから永遠に旅立ってしまって、毎日見たこともないものに出会うこと、となるが、永遠に旅立ってしまうと(そのスキーヤー、トンバさんのように大金持ちの坊ちゃんでなければ)、新宿駅で夜(も昼も)お過ごしになる方々の仲間に入れていただくのも時間の問題となる。
  となると、思い立ったら、とにかく旅立ってしまい、いつもと違う風景や人やものに気持ちをすり寄せ、つかの間でもナニモノにもしばられない時間をぶらぶら、へらへら過ごすことができている普段の旅は、結構いい線いっていると思えてしまう。
  さらにもう一つ忘れてならないポイントは、こういった時間を共有する相方の存在だろう。私の場合、同じ時に同じ場所にいても違うものを見ているS子との旅はお得感もきわめて高い。我ながらビンボーくさいとは思うけど、旅におえkる相方の重要性は、やじさん、きたさんの例をあげるまでもない。
  まあ、一言でいえば、旅はベストパートナーと、思い立ったらすぐ出かけるっていう、単純な(だけど実は案外難しい)のが、私の理想ということだ。

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