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DATUMS 1994.5
教育:大学教育における観光学

溝尾 良隆  立教大学社会学部教授

■みぞお よしたか 
 1941年東京生まれ。1965年東京教育大学理学部地理学専攻科卒業。同年株式会社日本交通公社入社。1969年に財団法人日本交通公社に移籍、調査部首席研究員、地域調査室長を歴任の後、1989年より現職。主な著書に、交通図書奨励賞受賞『観光事業と経営』(東洋経済新報社)、『観光を読む 地域振興への提言』(古今書院)等がある。


  立教大学の観光学科は社会学部に属し、1967年の創設以来四半世紀の間、わが国の4年制大学レベルにおける教育機関として、一定の役割を果たして今日に至っている。観光関連の大学レベルの教育機関としては、短期大学レベルでは東洋大学短期大学、成蹊女子短大学の校、4年制大学レベルでは本学のほかに横浜商科大学というさびしい状況が長い間続いた。しかしリゾート法の施行に伴い、地方において観光学科の必要性が認識され、新設された大学には観光学関連の学科が目玉となり、91年には宮崎産業経済大学に94年には北海道の北海学園北見大学に、同年沖縄名護市の名桜大学に設置されるようになった。さらにまだ正式な認可はおりていないが、宮城県では97年開校予定の県立大学に、わが国初の観光学部の設置が計画され、具体的な検討作業が進められている。アメリカでは、ホテル、レストランを中心とする観光産業教育の4年制大学は約100校を数えており、隣国の韓国も約20校にのぼることを考えると、わが国の観光教育は、遅きに失したとはいえ、今後さらに増大することは間違いない。
  立教大学観光学科には毎年130人前後の学生が入学する。バブルがはじけ、しかも受験生そのものの減少で、受験料や授業料が高い私立大学が敬遠されていく昨今であるが、観光学科の人気は相変わらず高く、今年度入学者の競争率も10倍を越えていた。専門のカリキュラムは、1年で観光概論を学んだあとに、2年から本格的な専門教育になる。2年から演習(ゼミナール)も開始され、学生は10名の教師の中から、自分の興味のあるテーマにそってゼミを選択していく。専門の内容は大別すると、旅行し、観光現象、観光心理などの観光社会学的な分野、旅行産業、交通産業、宿泊産業などの観光経営学的な分野、観光経済効果、観光開発、観光地理学などの観光計画的な分野に分けることができる。卒業論文は、必修ではなく、必修にするかどうかはゼミに任されている。共同で卒業制作に取り組むゼミもある。
  大学院は、社会学研究科応用社会学専攻後期課程(博士課程)まで観光学を学ぶことができ、外国人入試、社会人入試、一般入試の3本立てになっている。そのほかに観光研究所で、毎年、社会人、学生を対象として「ホテル観光講座」と「旅行業講座」を開設して、多くの受講者に好評を博している。特に旅行業講座では、前半は一般旅行業務取扱い主任者の資格を取得することを重点においている。
  最近5年間の就職先は表1に示す通りであるが、昨年もバブル時代とほぼ同じ頃には就職は内定し、まずまずであった。女子学生の人気企業は、航空会社、JR、旅行会社が圧倒的に強く、男子もほぼ同様ではあるが、建設会社の希望も高い。就職先で注意すべきは、例えば建設会社に入社した学生も、ホテル部門で勤務したり、ホテル立地を検討する企画部門にいるので、表の産業分類からは必ずしも学生の就職先の嗜好、実態は判断できない。旅行業は運輸・通信に含まれているので、就職部に別途作成して貰ったのが、表2である。
  これまでみてきたように、わが国でもようやく観光学科が各地に誕生してきているし、今後の増加も予想されているので、これから各分野において観光学を専門に学んだ学生が活躍していくことだろう。

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