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DATUMS 1994.06
マルチメディア・データベース “博情館”国立民族学博物館

久保 正敏  国立民族学博物館第五研究部助教授

■くぼ まさとし
 1949年尼崎市生まれ。1974年京都大学大学院工学研究科修士課程電気工学第二専攻修了。京都大学工学博士。京都大学を経て現職。コンピュータ民族学、民族情報学専攻。共編著『Toward Computer Ethnology』『研究情報ネットワーク論』、論文に「歌謡曲の歌詞に見る旅」「コンピュータとアボリジニ」など。


  本年6月でちょうど創設20周年を迎える国立民族学博物館(略称「民博」)は、60余名の研究者を擁する民族学(文化人類学)研究センターであると同時に、民族学情報センターの役割も持つ国立大学共同利用機関である。昨年まで館長を務めた梅棹忠夫氏は、創設当初「博物館はモノだくでなく、その背後にある情報を収集・研究・提供する機関、すなわち博情館であるべきだ」、「コンピュータとは、機械ではなくダレでも簡単に使える道具たるべきだ」などの先進的ガイドラインを示した。これに沿って民博は人文科学系の研究機関としては異例なほど積極的にコンピュータ活用とデータベース構築を進め、現在では表に示すような膨大なデータベースが出現している。
  民博では資料を、文献図書、HRAF、映像音響、標本の4種類に大別している。標本資料とは、生活用具や儀礼用具などのモノを指し、諸民族の文化を知るための「索引」と位置づけられる資料で、現在20満点を越える。その全てに対して、使用民族、名称、用途などの書誌的事項がデータベース化されている。HARF(フラーフと読む)は、米国に本部を置く国際的組織が各民族の文化や社会を記述した文献を選択・収集し、独自の分類システムに基づいて整理した膨大なペーパーファイルである。民博は1976年から同組織の会員に成りファイルを導入し、文化項目分類コード、地域・民族分類コードなどの索引情報をデータベース化しており、これらをキーに検索すれば、様々な人間活動に関する記録にアクセスできる。
  民博は、これらの文字情報によるデータベースだけではなく、マルチメディア展開にも力を入れている。標本資料については、既に1983年から正面・平面・側面・鳥瞰の四面の画像をディジタル撮影し、ディスクに蓄積するが画像サーバが稼動しており、書誌的事項の文字データベースと連動した画像検索ができる。研究者がフィールドワークで撮影したカラースライドについてもディジタル画像を蓄積しつつある。また、音響資料のディジタル化・蓄積も開始した。
  このようなマルチメディア・データベース化の進行に対応してシステム構成も進化し、主に文字情報データベースを管理するホストマシン、画像データや音響データを管理するサーバ群、利用者向けの端末群がLANの周囲に配置された、分散型データべ―ス構造になっている。これらをうまく連携させ、かつ、シソーラスを組み込むことによって自然語に近いキーワードで文字、画像。音響情報をメディア横断的に検索できるシステムの開発を目指している。
  文字データベースの一部は、学術情報センターの運用するネットワークやインターネットを介して外部に公開しているが、今後は、著作権や技術動向を勘案しながら画像や音響データの公開を検討する。こうした研究者向けのエータベース公開だけでなく、データを加工し相互にリンクを張って、ハイパーメディアのような形で一般市民に提供する「マルチメディア版民族学百科事典」の開発も、今後の大きな課題である。
  一般市民の異文化理解という今後益々増えるニーズにも対応できる、情に厚い博情館の構築を目指していきたいと考えている。

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