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DATUMS 1994.08
風景がつながる、都市がつながる

橋爪 紳也  京都精華大学講師

■はしづめ しんや
 1960年大阪市生まれ。京都大学工学部建築学科卒。工学博士。建築史・都市計画史専攻。『海遊都市ーアーバンリゾ−トの近代』『明治の迷宮都市ー東京・大阪の遊楽空間』『化物屋敷』他、著書多数。


●風景が生まれる
  沖を行きかう船を眺めて、しばらくたたずんでいると、ここが大阪市内であろことをすっかり忘れ、どこか海外のリゾート都市にいるかのような錯覚におちいる。大阪の新名所、アジア太平洋トレードセンター(ATC)はそういう場所だ。
  夕暮れ時ともなると、岸壁に接する公開空地は若いアベックでいっぱいになる。あちらこちらに設けられた階段、芝生、デッキなどに散らばり、二人だけの世界をつくりあげている。
  とりわけ目につくのは、点々と設置された投光装置である。上部がちょうどふたりが座れるスペースにデザインされている。カップルの寄り添う影が淡い光のなかに溶けこんで、実にロマンティックな情景を創りだしているのだ。
  ATCだけではない。近年、大阪湾岸の埋め立て地には、ぼくたちの五感に訴求する新名所があいついで姿を見せている。まちづくりとは、ある意味で新たな光景を創出する作業であることを、あらためて認識させられる。

●風景がつながる
  湾岸の風景がいかにダイナミックに変わろうとしているのか。その様を一望するためには、空気の澄みきった日などに、六甲アイランド南端の公園に腰をおろしてみることをおすすめする。
  右手にはポートアイランド。もしかすると遠くに、淡路島や明石海峡大橋が見渡せかも知れない。左手には大阪市内、南港・天保山から北港にかけての建築郡が見とおせるはずだ。工事途中のワールドトレードセンターがランドマークになっている。関西国際空港に発着する飛行機も、はるかに視界に入ることだろう。
  夜には阪神高速湾岸線の光の帯が、これらの施設をつないでいるのが良く判る。個々に知っている新名所が、実はすべてがつながっていたことを一大パノラマ景のなかで確認することができる。

●都市がつながる
  明石・神戸・芦屋・西宮・尼崎・大阪・堺・泉大津・岸和田…。
 
 円弧を描く大阪湾にそって、いくつもの個性的な都市がならんでいる。これまでの各都市は、内陸部の都心部を経由する鉄道や道路で結ばれていた。それが今、臨海部で横に連帯しようとしている。いくつもの橋が川を渡り、港を跨ぐ。湾岸を貫くハイウェイも完成した。
  それぞれの都市が、個別に、勝手にすすめていたウォーターフロント開発計画の全容がなんとなく見えつつある時期にきて、すべてを横につなぐ軸線ができあがった。
  大阪湾が描くゆるやかな円弧をなぞるように、帯状の生活空間が出現しつつある。21世紀における新たな居住空間のモデルであり、また日本型のアーバンリゾ―トの先進事例でもある。これからもこのエリアを注目してゆきたい。

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