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DATUMS 1995.10
人的サービスのあり方を問い直すインターネット

豊島 雅和  日本IBM

■とよしま まさかず
 1953年生まれ。日本アイ・ビーエム株式会社インターネット・マーケティングオフィス課長。


  消費者である顧客の立場からすると、旅行の業界に限らず、最高のサービスに出会う「サービス・エンカウンター」の印象は強烈なものである。ここで、我々の日常生活で、例えば自動車教習所の指導員や、旅行時に添乗員を選択できるかを考えてみよう。残念ながら、現実ではサービス提供側の論理によってサービスは提供され、利用者側に選択の余地は無いことが多い。
  この本来すばらしいはずの「サービス・エンカウター」に、あまり日常では出くわさないのは、なぜなのであろうか。
  サービス提供側では、顧客対応の社員教育を徹底する努力はされている。しかし、質の高いサービスをする人もいれば、そうでない人もいる。第一は、この人間のサービスにおける属人性がある。第二の点は、サービス提供側の持つ目標と、利用者の目標との相違である。提供側は単位時間当たりに、少しでも多くのサービスをこなし、時間内に業務を完了したいと思うであろう。一方、利用側はサービス側の内部の事情におかまいなしに、自分の要求に対応して欲しいと思うであろう。これらのトレード・オフをどうバランスさせるかが、サービスビジネスの課題の一つである。
  この課題に対する一つの解決策として、インターネットがある。インターネットはコンピュータのネットワークがいくつも結びついたネットワークであり、全世界的に5,000万人を超える利用者がいるといわれる。
  インターネットの世界においては、右図の一例に示すように、全世界中で3万余りの情報発信がなされている。さらに仮想現実感のある旅が未来に実現することを予感させる。 そこまでいかなくとも、カタログ請求の対応などの情報提供の業務処理において、インターネットは、直ちに効果を発揮することであろう。単なる情報提供には、事務的でセルフサービスで十分という利用者に必ずしも最高のサービスではないかもしれないが、属人性を排除した一定品質のサービスを提供できる。また、ネットワークは常につながっている性格のもであるから、週7日、24時間の運営が可能である。サービス提供側は、処理すべきトランザクションを分散化でき平滑化が図られ、省力化のメリットもある。
  人間と機械の並列化の現象は、銀行の窓口よる人的サービスと自動支払い機、またJRの改札口と自動改札機の関係にも見ることができる。その並存関係と同様で、人による情報提供代替手段として、利用者にとりインターネットはセルフサービスで情報を収集する代替案になりうるものである。
  インターネットにより、品質の一定な情報提供サービスが可能であれば、品質の低い人的なサービスは利用者から徐々に見離され、駆逐されていくことになるであろう。サービス提供側には、生の触れ合いや人的なフォローや例外処理など、複雑で共感性を要するような、従来以上の高度なカウンセリング能力が求められるともいえる。これらの質の高い人的サービスこそ、これからのサービス産業に従事する者が目指すべきものといえるであろう。

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