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DATUMS 1995.11
番組「35歳」を制作する視点

沢田 昇  NHK名古屋放送局プロデューサー

■さわた のぼる
 1957年・山梨県勝沼町生まれ。1981年NHK入局後、高松放送局配属。1986年NHK放送センターディレクターとして、「日曜美術館」「日本の美」「まんがで読む古典」「天才てれびくん」などを手懸ける。1995年名古屋放送局へプロデューサーとして転勤。現在に至る。


  皇太子、浅野ゆう子、ディエゴ・マラドーナ、真田広之。この4人の共通点は? この問題に即座に答えられるのは、NHKの「35歳」(総合金曜夜10時30分?)を毎回見ていただいている方でしょう。その通り、この4人は1960年生まれで今年35歳になる有名人です。この他にも、山田邦子、前田日明、野田聖子……意外にも多くのジャンルで活躍している世代なのです。この世代の普通の人々を主人公にしようというのが「35歳」のコンセプトです。
  そもそもこの番組は、名古屋放送局のある35歳のディレクターが、「自分たちの世代って一体何だろう?」という素朴な疑問から提案したもの。これが大組織NHKであまたある新番組提案の中から採択されたというのは画期的な事でした。
 しかし、実際に番組を制作することになってスタッフはハタと困ったのです。「35歳の人たちってどこがおもしろい?」「どんなテーマがある?」「他の世代と本当に違うの?」“35歳は今日の日本を解析し、明日の日本を考えるキーワードだ”と歌ってみたものの、ほとんど手探り状態の出発でした。
  そこで我々が始めたのが、唯一人居る35歳のディレクターの同級生や同期、そのまた友達に会社・家庭・興味など・とにかく取材していったのです。安保の年1960年に生まれた“高度成長の申し子”たちは、団魂の世代の蔭に隠れながらテレビやマンガ文化にどっぷりつかり豊かさを享受してきました。が、人生の分水嶺“35歳”にさしかかった現在、ポストバブル、高齢化、高まる国際責任など大きな課題を背負って、時代のトップランナーとして走らなければならない事態に直面していたのです。この現実は35歳にとって否応なしに生き方や価値感を考え直すきっかけを与えています。
  「お互いに相手に全てを求めない。セックスが無い方が良きパートナーとなる」「パソコンネットは、○○の奥さんとか○○のお母さんではなく一個の人間としてコミュニケーションできる唯一の場所」「年下のダンナの方が肩肘張らず暮らせる」etc.……35歳のディティルに迫れば迫るほど生き方、価値感など確かな変化が番組の中で見ることができました。
  “35歳”が旧来の生き方を突き破って新しい日本人像を作れるのかとても楽しみです。私も近い世代として共感したり、納得することがしばしばですから。ただ、女性たちがとても元気なのに比べ、男たちに今ひとつインパクトが無いのは気懸りですけれど……。

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