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DATUMS 1995.04
社会環境の変化と新業態ホテル

吉田 武郎  (株)長銀総研コンサルティング コンサルティング事業部・チーフコンサルタント

■よしだ たけお
 1979年早稲田大学理工学部卒業。食品会社研究所、調査、事業開発部門を経て1989年(株)長銀経営研究所入社。93年より現職。ホテル、スポーツクラブ、外食産業などの新規業態開発等を担当している。


  現在、我々を取り巻く社会環境は非常に速いスピードで、かつダイナミックに変化している。一般に、変化の渦中にある人々はその変化に鈍感で、社会情勢が決した後、ふり返ってその変化の大きさに呆然とすることが多いようである。
  最近の社会環境の変化を代表するテーマとして取り上げられるのは、「高齢化」「情報化」「女性の社会進出」「国際化」「モータリゼーション化」などで、これらが複雑に関連しながら「産業の空洞化」や「少子化」といった現象を生み出している。ホテル業界としても、既にこれらの変化に対応した施設やサービスを積極的に提供している。
  さて、今回はモータリゼーション(自動車の大衆化)の進展に対応した新しい業態「ロードサイドホテル」を紹介しよう。ご承知のように我が国におけるモータリゼーションは、昭和40年代前半から高度経済成長の波に乗って急速に進展した。世帯当たりの乗用車普及率の推移をみると、昭和51年(1976)に50%を超えた乗用車普及率は平成2年(1990)に80%に達し、さらに平成5年には90を超えるにいたった。
  このようなモータリゼーション進展に対応した宿泊施設は、アメリカでは1952年のホリデイ・インの第1号店以来「モーテル」といった業態で急速に拡大していった。しかし我が国ではこの業態が本来の意図からゆがめられた使われ方をされ、長い間「ロードサイドホテル」「モーテル」は我が国ホテル業界のなかで陽の当たらない、日陰の存在であった。
  このような一般的な風潮の中、10年程前から地道に自動車利用のビジネスマンをターゲットとして、長野県内の高速道路のインターチェンジの近くや主要幹線道路沿いにホテルを展開してきたのが「ルートイン」チェーンである。
  現在のところ客層は30代〜40代の営業マンや工場関係の工事業者でその9割が自動車利用客であり、平日中心のビジネスホテルとしての性格が強い業態である。このホテルチェーンのコンセプトは「低料金で充実した客室機能の提供」で、これを支えているのは徹底したローコストオペレーションである。
  その第一は投資金額の圧縮で、客室、パブリック部分ともに余分なものは極力排除している。第二に営業上のコストも極端に切り詰めている点である。現在80室の標準的店舗を正社員4人で運営できるノウハウを確立している。しかし、料金(6,500円基準)に対するサービスや施設の内容、グレード(客室面積16.5?、浴室1.2×1.8m、ドライヤー完備)を評価すると、「対価意識」の強い現在の消費者にも十分通用する良質な商品である。
  現在、甲信越を中心に11店舗展開しているが、今年中にさらに4店舗新設の予定である。将来的にはフランチャイズシステムや外食企業とのジョイントにより、さらに多店舗化をはかる計画である。アメリカで急成長のマリオットの「コートヤード」にコンセプトが似通っており、商品コンセプトの浸透ととファミリーニーズへの積極的な対応により、急激に普及する力を秘めている業態である。

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