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DATUMS 1995.05
結婚式は誰のもの?

野々村 進  旅行ライター

■ののむら すすむ
 旅行会社勤務を経て、現在フリーの旅行ライター


  近年、海外で結婚式を挙げる日本人カップルが増えているとのことだが、宗教や社会的習慣の違いを気にすることなく、また異なる言語で将来を契りあう日本人の若者(でない場合もあるが)を見て、現地の人々はどう感じているのだろうか。ビジネスと割り切ってしまえばどうということもないのだろうが、地域・国によっては理解に苦しむ教会なども多く、ましてやその場を盛り上げる「さくら」までアレンジしなくてはならない現地エージェントの苦労がしのばれるところだ。
  当人達にしてみれば、結ばれることの喜びと、洋画のワンシーンに身を置くような、人生のなかで最も非日常的な時を過ごすことのできる満足感で一杯であろう。しかも、海外での挙式には、必要最小限の気心知れた仲間内しか呼ばないことが許されるし、その日からハネムーンでなことで、結果的には経済的効果もバツグン!という場合もある。何よりも、普通のととはちょっと違ったことをしたいという優越感が感じられるのは大きな魅力なのだろう。
  一方、こうした「当事者満足型の挙式」とは裏腹に、いわば「親族満足(当事者振り回され)型の結婚式・結婚披露宴」なるものが日本には数多く存在する。「結納の10倍返し」で有名な北陸地方では、式前日にシースルーのトラック数台に紅白のすだれをかけ、新婦の家から新郎の待つ新居へと家財道具一式が厳かに運ばれる。その際トラックに入りきらない新車も同伴。
  さらには、搬入後、近隣住民へのタンスの中身のお披露目といったパフォーマンスのおまけまで。式当日には、新婦は新郎の実家に赴き仏壇をお参りし、家をでる際にまんじゅう蒔きの儀式を済ませる。披露宴では、お色直しが最低3回はあるため、ほとんどが新郎・新婦そっちのけのカラオケ大会。そして、招待客には両手をふさぐ引き出物。田舎ではさらに披露宴終了後、新郎は新婦の家で親族からの溢れんばかりの祝い酒の歓待(?)で夜を明かす……といった具合である。
  新郎・新婦は、あたかも「家」の保守を祝う際の御輿のような存在、というのは言い過ぎだろうか。
  このような例は特別にしても、「結婚式・披露宴」が、特に女性にとっては、かなりの忍耐力と体力を要するイベントであることは間違いない。そして、、多くのカップルが披露宴翌日には、ハネムーンへ出かけることとなるが、式の疲れを癒す余裕もなしに、おみやげ物の確保と短期間に充実した旅行をしようとあれこれ計画をたてる。ハネムーンから帰ってきた途端ダウンという諸氏も多いのではないだろうか。
  気心知れた仲間だけの祝福で、あるいは誰も呼ばずに2人だけでののんびりと式を挙げる……「家」の儀式から開放されて、異国の文化に浸りながらロマンティックな時を過ごすことのできる海外の挙式は、なかなか利口な手なのかもしれない。

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