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DATUMS 1995.09
沖縄旅行の魅力−自然と文化人

岩垂 弘  ジャーナリスト

■いわだれ ひろし
 1935年長野県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。1958年朝日生新聞社に入り、首都部次長、社会部次長、同編集委員などを歴任して、1995年に退職。


  私は沖縄旅行が大好き。初めて訪れたのは1969年で、沖縄の本土復帰前だった。当時、私は新聞記者で、沖縄全島に燃え盛っていた本土復帰運動を報道するための訪沖であった。その時、沖縄の魅力にすっかりとりつかれてしまい、その後も毎年のように訪れる羽目となった。年に数回訪れたこともあり、私のこれまでの沖縄訪問回数は、ちょっと数え切れないくらいだ。
  ところで、以前から、沖縄を訪れるたびに「これでいいのだろうか」と気になることがある。それは、本土から沖縄に訪れる人達に二つの旅行タイプがあるということだ。
  一つは、那覇空港から本土系のホテルに直行し、そのホテルの専用ビーチで遊び、そのホテルで土産を買い、そこから那覇空港に直行して帰るというタイプ。
  もう一つは、沖縄戦の終結地となった本島の南部の戦跡や本島中部の米軍基地群などを巡って帰るタイプだ。どちらも沖縄の実態には触れている。でも、これではどちらも沖縄のほんの一端に触れたに過ぎず、沖縄の全体像に触れたことにはならない。せっかく大金を払って出掛けながら、これでは沖縄の魅力半減だ。
  では、沖縄観光の魅力とは何か。私の26年に及ぶ沖縄体験から言うと、それは「自然」と「文化」と「人」の三つに尽きる。
  まず、「自然」だが、その最たるものが海の美しさだろう。「沖縄の海は世界で最も美しい」と語った人に出会ったことがあるが、私もその賛辞に賛成だ。私の若干の海外旅行経験からしても、この人の見方に納得する。まことに沖縄の海は魅惑的で、その素晴らしさを的確に表現する言葉を私は知らない。とりわけ、離島の海の美しさは格別。太陽光線によって千変万化するサンゴ礁のエメラルド色の海面を前にすると、私は言葉を失う。
  次いで「文化」だが、これは沖縄の歴史と深くかかわる。琉球処分によって日本に組み入れられるまでは琉球王国だった。そのことが、独自の文化を育んだ。琉球舞踊、民謡、空手、紅型、芭蕉布、琉球料理、泡盛…。グスク(城)も挙げなくてはなるまい。そして「人」にかかわる魅力とは、沖縄の人々が示すおおらかさと優しさである。
  沖縄を訪れる人は、この三つの魅力に存分に触れてほしい。そうすれば、二度、三度と足を運びたくなるはず。受け入れ側も、観光客が三つの魅力に存分に接することができるよう配慮してほしい。
  ただ、残念でならないのは、これらの魅力に陰りが見えることである。それは、本土復帰以来、全島で急ピッチで進められてきた各種の開発が、一部で自然破壊をもたらしていることだ。開発と自然保護。そのバランスをとるのは極めて難しいが、沖縄がこれからも「観光立県」を目指すとしたら、自然破壊はまさに自殺行為に等しい。
  観光立県のためのかけがえのない資源ともいうべき自然の保全に、沖縄の人たちがいっそう高い関心を示してくださるよう期待したい。

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