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DATUMS 1995.07
ドイツの環境保護気運の進展

相原 恭子  トラベルジャーナリスト

■あいはら きょうこ
 横浜市生まれ。慶應義塾大学文学部哲学科卒業。1986年-1993年、ドイツ政府観光局勤務の後、トラベルジャーナリスト、ドイツ語通訳。


  ドイツはエコロジー先進国といわれる。確かに、ドイツで暮らしたり、旅してみると、その日常生活に個人レベルの環境保護への強い意識が感じられるのだ。なぜだろうか。
  その大きな理由には、日常生活に自然を強く求めるドイツ人のライフスタイルや見せかけよりも本質を突く文化、合理主義が挙げられると思う。
  1986年になって初めて連邦環境・自然保護・原子炉安全省が設けられたドイツだが、行政よりもまず、市民の意識と行動が先行している点に注目したい。
  たとえばドイツ人と話すと「ガルテンアルバイト(庭仕事)」「シュパツィーレンゲーエン(散歩)」「グリューン(緑)」「プラクティシュ(合理的)」という言葉がよく出てくる。
  実際、週末には手塩にかけた庭に友人を招いてコーヒーを飲んだり、庭の花や野菜を交換したりする。余暇に人混みへ出かけたり、買い物をしようとする人はいない。休日は商店は閉店。自然の中でくつろぐ日なのだ。
  冬でも、天気の良い日は近くの公園や森へ散歩に出かける。大都市の公園でさえ、湖や林があるほど広大だ。数週間も取れる休暇ともなれば、老いも若きも海、山でハイキングや海水浴。もちろんリソートホテルや観光地は、きれいな海や川、緑の山々がなければ客が来ないし、経営が成り立たないのだ。
  合理的な発想も効を奏していると思う。丁寧さが求められる日本では、過大包装が問題になった。が、ドイツでは15年以上も前からスーパーマーケットの手提げ袋もない。必要な人は一枚50ペニヒ(約32円)で買えるが、こういう使い捨て袋を買う人はまずいない。エコロジーパックなど、袋持参で買い物に行くのだ。
  ホテルでは、もちろん清潔に洗濯されたタオルを何枚も置いている。が、不必要な洗濯で海や河川が汚染されることを警告し、ちょっと使っただけのタオルを翌日も使用するかどうか、客の意思を聞く表示をしている。
  消費者が過剰なサービスを要求しないばかりか、エコロジーを考えない商品は売れないし、企業はイメージダウンとなる。こうした市民レベルでの環境保護機運は、サービスの合理的な捉え方や、生活に不可欠な自然が破壊されては大変だという本音の意識に強く支えられ、進展しているのだ。
  エコロジーは目に見えないだけに、一人一人の意識と環境への姿勢が問われる。自然に目を向け、身近なところから少しでも実行に移していきたい。

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