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DATUMS 1995.07
市民参加の「つがわ狐の嫁入り行列」――新潟県東蒲原郡津川町

澤野 修

■さわの おさむ
 1950年津川町生まれ。明治大学経営学部卒業。(株)澤野広吉商店勤務を経て、93年より津川町長(1期目)


  「狐の嫁入り」阿賀野川の中流に位置する津川町は、町の7割を山林が占め、日本海型気候の山間地域です。手つかずの自然が多く残り、なかでも大河阿賀野川を中心とした景観のすばらしさは町民の誇りでもあります。また、古くから越後と会津を結ぶ交通の要所として栄え、阿賀野川の水運を利用しての産業経済文化の発展は当町の基礎を築き上てくれました。
  しかし、時代の変遷の中、主産業であった第一・第二次産業の低迷がはじまり、過疎と高齢化が恒常化する山間地域に姿を変えてしまいました。そして、現在商店街の低迷はもとより、住民の危機感の欠乏による無気力化。このままでは…という危機感から地元商店街の若者を中心にもう一度津川を「再生・復興」してみようという気運が高まり、津川の自然・文化・歴史・生活をさらにとぎすまされたものに再生し、未来へ継承していくものとして、民間運動のレベルで実践に向けて動き出しました。当町ではこれを「ルネサンス」と呼んでいます。そのひとつが「狐の嫁入り行列」です。
  このお祭りは(伝統的文化の再生として位置付け)津川の自然と歴史文化の再生をテーマに問う町のシンボル的存在の麒麟山を中心とした自然が創り出す幻想性とそれにまつわる伝統をベースに地域イベント化したものです。
  「狐の嫁入り行列」は、江戸時代の嫁入り風俗をそのままに西の空に沈む頃、町中の明かりを消し、松明(たいまつ)や提灯で幻想的な雰囲気をつくり出し、狐に化身した花嫁花婿を中心に108匹(人)の大人数で嫁入り行列を行い、披露宴会場となっている常浪川水上ステージで三々九度などを行い、その後ささ船に乗り対岸の麒麟山へ「狐火」を伴い嫁いで行き、暗やみの中、狐の泣き声がいつまでも山々にこだましてフィナーレをむかえます。
  その一連の情景は、まさに幻想の世界であり、水上ステージを囲むかがり火は、川面にその妖しい光を落とし、観る人に底知れぬ感動を与えてくれます。まるで狐に化かされているような、そんな気持ちになる津川のお祭りです。
  毎年5月3日に開催されるこの祭りは、その独創性で県内はもとより全国的にも有名になりましたが、必ずしも観光的要素を前面に出すのではなく、自然の中で生まれ育った我々が地域の自然や文化的伝統の素晴らしさを再認識し、住民自らの発想と実践で展開しました。これにより、町民参加を容易にすると同時に「自分の地域(町)を知る」ことができ、住民が自分の住んでいる地域に「誇り」と「自身(やればできる)」を持つことができました。このことは、地域づくりに対する意識改革に大きくつながりました。
  現在、狐の嫁入り行列が似合う町並みをテーマに、官民一体となった町づくりを進めております。恵まれた津川の環境の中で、自然と共存共栄し調和のとれた街、文化を新しく創造し、伝説を「継承」に移しかえてゆきたいと思います。

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