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DATUMS 1995.08
情報社会のオルタナティブ−PMC(Public Media Center)

松村 史朗  日本旅行労働組合中央執行副委員長

■まつむら しろう


  カリフォルニアの澄んだ空気と青空の下で、NPOで働く人々はどの人も皆一様に元気だなというのが一番の印象だ。日本の労働組合運動が、企業業績の低迷の中で賃上げもままならず、閉塞状況にあるだけに、なおさらそう感じるのだろうか?
  NPO(Non-Profit Oganization)については簡単な説明だけに留めておくが、日本語へ直訳すれば「非営利組織」。申請によっては租税控除の優遇措置も受けられることから、資格要件として細かな制約はあるが、性格的なポイントはその活動目的が公益的であるかどうかと、その事業収益を出資者(寄付金や会費の拠出者)へは配当しないということにある(非配分の原則)。
  今回の海外交流団では、5箇所のNPO組織を訪問したが、その中から「PMC(Public Media Center=公共メディアセンター)」の活動について紹介しよう。
  1974年設立のこの団体は、簡単に言えば「広告代理店」だが、その対象が石鹸や自動車ではなく、社会性のある問題、主に環境問題や社会正義、第三世界に関わる問題等について世間に広く知らしめるための広告宣伝活動を行っている。
  年間約200団体に対して、彼らがもっと世に知らしめたいメッセージを広げるための戦略、戦術の伝授をしている。その半分は 相手からの持込みだが、残り半分はPMC自体の問題意識から、逆にその課題にあったクライアントへ働きかける中でクライアントの名で発信している。
  PMCの運営に当たっては次の6つの原理を掲げている。
(1)人はだれでもCommunictionする義務がある(単なる情報交換ではなく、あなたの持つ価値観を伝える義務、価値あるものは伝えなければならない義務がある)。
(2)社会的な宣伝は間接的に伝える(「社会的情報電波の法則」=メディアの言うことを信用しない聴衆に対しては、彼らが信用する人たちに語りかけることで、間接的に情報を伝波する)
(3)標的を定める(どんなメッセージも万人に受け入れられることはない。三割は賛成で三割は反対。残りの四割の浮動層に標的を定めた宣伝ならばコストも安く小さなNPOでも可能)。
(4)友達をつくるよりも敵をつくる(人は対立項によって物ごとを理解し、自分の立場を決める。例えば「熱帯雨林を守ろう」より「熱帯雨林を破壊するM社に反対しよう」というキャンペーンの方が効果がある)。
(5)責任あるやり方で極端に走れ(相手との違いを自ら明確に。相手に自分たちの主張を定義され、それをメディアで発信されるようでは勝てない)。
(6)我々の活動はすべて長期的な意味合いを持っている(人は正しい情報を与えれば正しい判断をする能力を持っているという世界観と、人は欲深く常に金に支配されているから規制すべき対象だという世界観との長期的な闘いである)。
  最後に、PMCのH.C.Gunther氏曰く「日本も世界のリーダーの仲間入りをし、これからの歴史をつくっていく立場にある。環境問題や社会正義の実現といった面で、これからの日本に対して大変注目してしている」とのこと。日本の労働組合運動も、これまでの「企業の壁」を打ち破り、次のステージにどう上っていくのか。それができた時には、日本の空の下でも「労働組合は皆一様に元気だな」と言われるようになれるのだろうか。

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