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DATUMS 1996.11
インターネットで医療が変わる

立川 幸治  ドクターズ・オピニオン代表

■たちかわ こうじ
 1983年東京医科歯科大学医学部卒業。虎ノ門病院、関東逓信病院、インタースタディ客員研究員等を経て、90年ドクターズオピニオンを設立。代表を勤める。現在東京医科歯科大学難治疾患研究所情報医学研究部門非常勤講師。情報技術の活用によってコミュニティづくりをめざすNPO、SVJ(スマートバレージャパン)実行委員。コミュニティネットワーク研究会専門委員等。


  まだまだ身近な存在には程遠いが、それでも1996年は日本のインターネット元年といってよいだろう。その大膨張には目をみはるものがある。しかし、マスコミを賑わしているのは、電子商取引をはじめとする商用利用やアメリカでの関連ビジネスの好景気だけだ。 果たして、私たちの生活にとって、インターネットやパソコン通信はどんな可能性を開いてくれるのだろうか?
  その第一は、出会いとコミュニケーションの拡大だ。とにかく、いままでのコミュニケーション方法では得られないような、偶然の出会いもネット上では当たり前のように存在する。そんな双方向性の特質を利用して、医療相談を始めたグループあるいは会社も現れてきた。
  いまのところ話題性だけが先行し、率直にいって中身がない。また、ファックスや電話があっても、かかりつけの医者にみてもらうという人が多い中、どこまで人々の支持を得られるかは疑問も残る。だが、命の電話やヘルプラインのように、匿名性を生かした特殊な領域で発展していくのかもしれない。何より、課題はたくさんあるものの、硬直した今までの医療現場を変えていく力を生み出す可能性はあるだろう。
  ただ、こうしたサービス、また、自分の世界もネットだけに依存して拡大するのではない。やはり従来のコミュニケーションも必要とする。というのは、コミュニケーションには「信頼」の醸成が必要で、残念ながらネットだけではそれは得られないからである。しかし、この仮説は裏返すと、すでに信頼でつながれた人たちにはネットが非常に大きな利用価値をもたらすことも意味している。
  もうひとつ紹介しておきたいのが、すでに皆さんご存知の、いわゆるホームページ。すでにいろいろな用途に使われているが、実は、多くの市井の人々が参加して百科事典の一節一節を書きあげることを可能にするツールでもある。そもそもホームページを記述するためのHTMLという文法は、それに従っていれば、あとで誰もが検索や整理を簡単に行えるように規定された標準だ。したがって、こうして作られたホームページの固まりは、ありとあらゆるジャンルに渡り、つねに更新されつづける百科事典として機能するわけだ。これは知の集積をめざすとき、画期的なツールの登場といえる。
  実際、医療という専門分野でも、医療技術や医薬品の評価を行う臨床試験を一定の基準にしたがって、一覧できるデータベースを作るという試みがネット上世界的規模で行われている。こんなことはインターネットがなければできなかった。
  インターネットの普及は指数関数的増加を見せている。それでも、日本の現状は人口比でみるとまだまだ英語諸国には及ばない。
  ニューメディア時代から裏切られ続けてきた筆者の感覚からすると、このインターネットブームもどうしても懐疑から入ってしまう。だが、その一方で、今度こそ、人々の生活に変革をもたらすインパクトを与えてほしいと切望している。ネットへの暖かな目と自ら参加する気持ちを一人でも多くの人にもってほしい。

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